13-2.職能開花の裏で
14話にするかで悩みましたが13-2で落ち着きました。
◆フローラ・エクシア◆
三男のクロウちゃんの五歳の誕生日、職能開花の日である。
そもそも職能開花していないのに何故か魔法を使え、しかも想像だにしないような魔法を使う息子。
あの『エアコン』という魔法は暑い夏を快適にしてくれて寒い冬も快適にしてくれた。
そんな息子の職能が普通の職能なはずがないわ。
夫とでクロウちゃんの職能は何だろうと予想したとき、『賢者』になれるのではと予想していた。
去年、クロウちゃんの姉のセレナちゃんが『剣聖の証』の職能を開花したのが記憶に新しい。
私達が住んでいるグランセイル王国の長い歴史の中でも『剣聖』職能は片手で数える程しかいない。
そして、そんな姉よりも幼い頃から異才を放っている息子が普通の……ましてや『ノービス』等の職能ではないだろう。
そしたら先日、あの子ったら「お母さん、僕の職能『ノービス』だったらごめんなさい……」と真剣な顔で謝ってきた。
そんなクロウちゃんには申し訳ないけれど、「もしもクロウがノービスだったとしても私達は愛してるわ、だから心配しないでね」と心にもない言葉を投げてしまったわ。
だって、あの子の事だもの、普通のはずがないわ。
クロウちゃんの祝い会が始まり、少ししてクロウちゃんの体が光り出した。
無事職能開花したのね。
そして目を開けた息子に夫からどんな職能なのかと聞いたところ、とても悩んで「ノービスでした」と答えた。
そんなはずはないのですけれど……もしかしてクロウちゃんの事だから私達を試しているのだろうか。
そう思っていたら、直ぐに姉のセレナちゃんから嘘をついていると言って問い質したわ。
そこからは、まぁ……もう驚き過ぎて驚きませんと決め込んでいたのに。
そう思っていたのに、息子から「賢者でした」と言われた時は良く分からない驚きを通り越して驚いたわ。
上級職能は必ず五歳の時点で『証』職能になると言われているはずなのに……。
職能開花していない状態でも魔法を使えていたから、そんな事もあるのだろうか……。
ほら、夫も聞いた事がないようね。
はぁ……最初職能開花した長男が『剣士』の時にはとても嬉しかったの。
そして、その弟も『剣士』を授かり、兄弟で『剣士』を授かる偉業はとても誇らしかったのに……。
次の長女はまさかの『剣聖の証』……三男は『証』を通り越して『賢者』という事ね……。
夫のアグウスくんと私の子供は創生神様の祝福でも受けているのかしら、ありがたいことですけれど……。
◇
◆サディス◆
私はフローラ・エクシアお嬢様の執事をしています。
三年前、末のお子様であるクロウティア様が職能開花する前に魔法を使用したのはとても驚愕しました。
クロウティア様は私の『空間魔法』を見ただけで使えるようになっていました。
『空間魔法』は空間魔法使いという特殊職能専用魔法のはずですが……私にもまだ分からない事があるのですね。
クロウティア様は『空間魔法』だけではなく、あの『氷属性魔法』まで使い、『エアコン』という魔法まで作られ、おかげさまで夏も冬も屋敷内が過ごしやすくなりました。
そして今日、クロウティア様の五歳誕生日でした。
クロウティア様よりこんな爺を尊敬するからとお祝い席に参加させて頂きました。
クロウティア様から職能『賢者』でしたと言われたときは、納得する半面もあります。
私の友人の一人に職能『賢者』を授かっている友人がいます。
しかし、彼は私の『空間魔法』を見ても使えるようにはならなかったのですがね…
もしかしたらクロウティア様にはもっと秘密があるのかも知れませんね。
「サディスさん、五歳で職能『賢者』を開花した人っているのですか?」
長男のライフリット様から聞かれました。
「はい、今までの歴史の中ではございません。クロウティア様が初めての『賢者』でございます」
実は私『空間魔法』使いでは有数の使い手で、知識や人脈等ございます。
魔法ギルドの歴史に『賢者』を五歳で開花した人は存在しないのです。
「かの『大賢者』になられた大賢者様も『賢者』になれたのは十歳と言われています」
「クロウくんって……やっぱり規格外なのね……」
ライフリット様もとても賢い方です、エクシア家の次期当主は安泰ですね。
さて、もちろんこの事は秘密なので誰にも話すつもりはありませんが、クロウティア様が成人になられたら『賢者』の友人にクロウティア様を紹介致しましょう、きっとお互いに良い刺激になるやも知れませんから。
◇
◆セレナディア・エクシア◆
今日職能開花したクロウの職能が『賢者』だったわ。
何となくそうなるだろうなと思っていた。
職能開花する前から魔法を使っていて、色んな魔法が使えるなんて皆聞いたことがないと言っていたから。
最初は「ノービス」なんて嘘を言ったけど、あの子は嘘つくの下手だから直ぐ分かったわ。
『賢者の証』ではなく『賢者』だったから言いにくかったのかも知れない。
最愛の弟が『賢者』なら私が『剣聖』として弟を守れる。
また明日からも稽古を一層頑張ろう。
取り敢えず、世界一可愛い弟にスリスリするわ。
一つ裏話ですが、何故『才能』ではなくて『職能』なのか、
才能の場合、〇〇が上手になる。
職能の場合、〇〇が出来るようになる。
な感じに考えていて、上手くなるのではなく、確定で使えるようになるように設定したかったからです。
それで才能開花ではなく職能開花になりました。
だからこの世界の住民達は職能開花するので、あまり努力をする人がいません。
それがまた一つ物語のポイントになる予定です。