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152.白熊の痛み

「補助魔法の次の魔法が……使えるようになって……」


 それを聞いたお父さんとお母さんがまた大きな溜息を吐いた。


「補助魔法の次か……聞いた事がないのう」


「お父様、クロウくんは凄い魔法使いなので……」


「ああ、セレナディアから『賢者』と聞いておる。しかし、賢者が回復魔法を使えるだなんて、初めて聞いたのう」


 おじいちゃんの鋭い疑問に冷や汗をかいてしまった。


【お……お母さん】


【あら、この近距離で内緒話かしら】


【えっ……と、おじいちゃんって…………その……】


【ふふっ、大丈夫よ、ちゃんと信用出来るわ】


 お母さんは僕の悩みをすぐに分かってくれた。


【ありがとう! お母さん!】




「実は僕『賢者』ではなくて……ちょっと違う職能で色んな魔法が使えるんです、おじいちゃん」


「むっ!? クロウディアは『賢者』ではなかったのか」


「はい、実は今まで一度も確認されていない職能なので、便宜上『賢者』と名乗らせて貰ってます」


「そうだったのか」


「はい、なので回復魔法も使えますよ」


 おじいちゃんがお母さんを見つめると、お母さんが大きく頷いて返した。


「そうか、クロウティア、儂の病気を治してくれてありがとうな」


 そう言いながら、おじいちゃんは僕の頭を優しく撫でてくれた。


「もし、儂に出来る事があるなら何でも言ってくれ、出来る限りクロウティアの力になろう」


「ありがとうございます!!」


 また一人、僕に力になってくれる人が出来た。


 僕のおじいちゃん。


 嬉しくてついつい、にやけてしまった。


「あ、ついでにおじいちゃんにも補助魔法掛けてもいいですか?」


「ぬっ!? 儂にも掛けてくれるのか?」


「おじいちゃんが宜しければ!」


 おじいちゃんが嬉しそうに僕の頭を優しく撫でながら「よろしく頼む」と言ってくれた。


 神々の楽園(アヴァロン)は性能もそうながら『ステータスボード』でも映るので、今は補助魔法を全力で掛ける事にした。


 それでも中々の効果だと思う。


 そして、おじいちゃんに補助魔法全種を掛けた。


「なっ!? これは――久方ぶりに力が漲ってくるわい! 小僧! ちょいと勝負せい!」


 お父さんがおじいちゃんに引きずられて行った。


 お父さん……そんな恨みがこもった目で僕を見ないでよ……。




「クロウくん」


「はい? どうしたのお母さん」


 お母さんがもう一度抱きしめてくれた。


「本当に……お父様の病気を治してくれてありがとうね」


「うん! でもそんなに大変な病気だったんですか?」


 お母さんが涙を拭って僕を話してくれた。



「お父様の病気はね、生まれてからずっと抱えていた病気なの、色んな回復薬や魔法も効かず……ずっと抱えていた病気なの。

 あの病気の怖い所は、今まで貯め込んだ痛みが一気に出て来るの、あの我慢強いお父様でさえ……あの痛みが出た初日は毎回泣き叫ぶくらいだったわ。

 同じような病気が記録に残っていたけれど……恐らく、耐えられたのはお父様だけだと思う、それくらいずっと苦しんでいた病気だから、本当にありがとうね」


 お母さんがこんなに喜んでくれて僕も嬉しくなった。


「最近では……滅多に笑わない(・・・・)お父様が今日沢山笑っていたわ」


 セレナお姉ちゃんと稽古していた時からおじいちゃん嬉しそうだったものね。


「これでお父様も楽になってくれたのなら嬉しいわ、さて私達もお父様達の稽古を見に行きましょう」


 僕とお母さんは笑顔でおじいちゃん達がいる訓練場へ向った。




 ◇




 ◆学園アルテミス、ロードクラス棟一階訓練場◆


 そこにはグランセイル王国の最強剣士と名高い二人が稽古を行っていた。


 大きな白い熊のような男と、程よい筋肉でスラっとしたイケメンを思わせる美男子だ。



 カンカンカンカン



「ほぉ! 小僧、腕を上げたな!」


「これもクロウのおかげなんですよ」


「ああ、この補助魔法か」


「ええ、僕にも掛かっていますからね」


「成程な、しかし、ただステータスが上がっただけ(・・)にしては動けるな」


 それを聞いた美男子が小さく溜息を吐いた。


「まあ……息子との訓練は……地獄ですからね」


「ほお?」


「後でお義父様も受けてみるといいですよ。息子の『闇の手訓練』を……」


 それを聞いて、興味津々になりつつも、目の前の強敵との訓練に心躍る大男だった。


 しかし――更に打ち合っている時……大男に異変があった。


「ちょ……ちょっと待った!」


 大男の声に美男子も驚き、二人は数歩下がって行った。


「お義父様? どうかしたのですか?」


 どうやら大男の様子がおかしかった。


 後ろで見ている美女と美少年もそれが気になる様子だった。


 そして大男は――――。










「痛い」









「へ?」


「い……痛いんじゃ!!」


「そりゃ……訓練中ですから……ね?」


「ぬ!? もしや……これは……(びょう)――」


「それが普通なんです! お義父様は今まで痛みが蓄積されてたから、感じられなかっただけなんです!」


「なっ!? まさか……戦う度にこんな痛みを……?」


 美男子がジト目になった。


「お義父様の剣戟が一番痛いんですからね!?」


「くっ!! まさか……普通の痛みがこれ程までとは……」



 大男は初めて感じる直接的な痛みをかみ締めた。

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