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149.激突!白熊

 僕は、おじいちゃんからブレイン領に来るよう言われてしまった。


「お祖父様、その件は……以前お伝えした通り、断わらせて頂いたはずですが……」


 セレナお姉ちゃんは以前にも誘われていたようだ。


「うむ、しかしお前達のような優秀な職能を腐らせておくのは勿体ない! 今は平和と言われてはいるが、いつか戦争になるやもしれぬ。その日のためにも、二人には強くなって貰わないといけないと思うのじゃ」


「お祖父様、私達は決して遊んでいる訳ではありません。しっかりと強くなっております」


「ほぉ……セレナディア、以前の稽古でああだったのに、そう言い切るか」


「はい、もしお祖父様が疑問に思うのでしたら……今からでも」


「ほう!! 流石はフローラの娘よ、強気で良いのう! では久々に稽古と行こうではないか!」


 おじいちゃんが嬉しそうに話した。


 セレナお姉ちゃんも、どこか嬉しそうにおじいちゃんと一緒に一階へ降りて行った。


 僕もそのあとを追った。




 ◇




 ◆セレナディア・エクシア◆



 久しぶりに、お祖父様とお会いした。


 相変わらず、暑苦しくて、とても大きい方だわ。


 お祖父様はとてもマイペースな方で全て()で解決したがる方だ。


 でもちゃんと義を通すお方なので、無茶ぶりは一切ない素晴らしいお爺様だ。



 久しぶりにお祖父様の稽古を受けられると思うと嬉しくなった。


 もう一つは……強くなった私をクロウに見て貰えるのも良かった。



「ほぉ……さっきの虚勢は伊達じゃなかったのだな」


 私の構えを見たお祖父様が褒めてくださった。


 持参した大型木剣を片手に、こちらを見つめているお祖父様は隙一つなかった。


 流石は――――王国最強(・・)騎士だ。



「さあ、いつでも掛かってこい!」


 お祖父様の号令と共に、私は最速で斬りかかった。


「むっ!?」


 私の初撃をいとも簡単に弾き返したお祖父様。


 そして、数十回程ぶつかり合った。


 流石はお祖父様……びくともしないわ。



「ふむ、中々に強くなったな、セレナディア! これはますます欲しくなってきたわい、ではこちらからも行くぞ」


 お祖父様の大型木剣が私を襲った。


 大きさを全く感じさせない速さで一振り一振りが襲い掛かる。



 ガンッガンッガンッ



 木剣同士がぶつかる鈍い音が訓練場に響いた。


「くっ……剣技! 青龍型神速剣!!」



 カンカンカンカンカン



「ッ、これを全部防げるなんて……」


「良い剣戟じゃわい、儂じゃなかったら大抵の奴は防ぐことも出来まい」


 お祖父様の目が鋭くなった。



 ―――来る!



「剣技、重衝斬撃」


 お祖父様の大型木剣が黒く光った。


「剣技! 白虎型凶鋼斬!!」



 ドガーーーーン



 お祖父様の黒い剣戟と私の白い剣戟がぶつかり合い、大きな衝撃波を生んだ。


 衝撃波でお祖父様と私は後方に吹き飛ばされた。


「はあはあ……」


 汗が止まらない。


 前回、お祖父様との稽古は一方的にやられるだけだった。


 お祖父様の重い一撃一撃の剣戟に成す術もなかった。


 しかし、今日は違う。


 私、ちゃんと――強くなってる。




 パチパチパチパチ




 そんな事を思っていると、後ろから拍手の音がした。


 クロウだった。


「おじいちゃん! お姉ちゃん! 凄いよ!」


 クロウが目をキラキラさせて喜んでいた。


 ふふっ……無邪気に笑っている弟を見て緊張が解けた。


「セレナディア――――まさか、ここまで強くなっているとはな。幾ら『剣聖』という職能が優秀だったとしても、鍛錬を怠っていれば、こうにはならないだろう……強くなったな」


 近くに来たお祖父様が、私の頭を撫でてくださった。


 大きくて……温かいその手は、とても居心地が良かった。


「良いだろう、勿体ないがセレナディアはこのまま自分で鍛えて良い」


「お祖父様……ありがとうございます!」


「うむ、では次はクロウティアだな」


 そう言いながらお祖父様はクロウを見つめた。


「えええええ!? 僕もやるんですか!?」


 驚くクロウ。


「当たり前じゃ! さあ、こっちに来い!」


 クロウはお祖父様に連れられ訓練場に入った。




 ◇




 ◆ジョゼフ・ブレイン◆


 儂の孫娘のセレナディアが、これ程までに強くなっていたことに驚きつつも嬉しかった。


 アグウスの小僧は強い癖にいつも女々しい事ばかり言いよるから心配していたが、そんな必要はなかったようだ。


 そして、今度は孫のクロウティアの番だ。


 ずっと病気と発表していたのに、何故、今になって()舞台に出て来たかは分からんが……。


 『賢者』ともなると納得もいく。


 戦争で最も危険なのは『賢者』だ。


 大型魔法はそれだけで多くの兵を倒せる。


 それだけで脅威なのだから、公表してしまうとアーライム帝国から暗殺でもされていたかも知れない。



 しかし……この子を見ても大した強さは感じない。


 寧ろ、ここまで感じないとなると異質だ。


 セレナディアは『賢者』と答えた。


 しかし、賢者らしい気配も全く感じない。


 なのでクロウティアの本気を試してみることにした。



「さあクロウティア! いつでも良いぞ? タイマンでは、魔法使いは剣士より不利だからの、最初はそのまま受けてあげよう」


 そんな事を言うと孫は首を傾げた。


「え? そうなのですか?」


 ???


「でもなー、まあいっか」


 何か独り言を言い、一人で納得しおった。


「おじいちゃん、いきますね?」


「おう!」


 クロウティアは右手を私に向けた。


 そして――。


「雷属性魔法!」


 その言葉を最後に……儂が目を覚ます事は……。















 目が覚めた時は知らない天井だった。

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