148.登場!白熊
白熊編始まりました!楽しんで頂けたら幸いです。
今日はアカバネの島を見回ってみようかなと思っていた。
しかし――――。
【く、クロウ!! 今すぐ学園に来て頂戴!!!】
セレナお姉ちゃんから慌ただしく遠話が届いた。
兎に角、早く来てとの事だった。
ディアナと一緒に急いで学園に向かった。
◇
学園に着いてみたら、セレナお姉ちゃんと一緒に待っていたのは――
――――熊だった。
本物の熊ではない。
真っ白の服を着て、熊と思えるくらい身体が大きいお爺さんだった。
そして何より……見た目だけが熊っぽい訳ではなかった。
見た目以上に……物凄く強い!
一目見ただけで、その強さが分かる程、凄い威圧感を放っていた。
昔、一度だけ会った奴隷伯爵さんの本当の姿にも負けず劣らない雰囲気だった。
その白熊お爺さんは僕をギロっと睨んだ。
「お前が……クロウティアなのか?」
「えっ……あっ……はい、そうです」
僕の事を聞いた白熊お爺さんは一瞬ブルッと震えた。
そして――。
「クロウティアぁぁぁ~!!!」
白熊さんが突撃してきた。
ディアナが僕を庇った。
白熊さんの突撃にディアナがふっ飛ばされた。
僕は足がすくんで動けない。
白熊さんが僕を――――。
抱きしめられた。
え?
「ぬおおおぉぉぉ!! セレナディアとそっくりで、なんて可愛いんじゃ!!!」
あれ?
白熊さんに抱きかかえられたけど、敵意は全く感じない。
寧ろ――温かかった。
白熊さんは僕を高く抱きかかえて、涙を流しながら喜んでいた。
この白熊お爺さんって誰だ?
「漸くだ……漸く! 可愛い孫を抱けた!!!」
えええええ!?
孫!?
誰が!? 誰の!?
白熊お爺さんに抱きかかえられ、ポカーンとしている僕にセレナお姉ちゃんが声を掛けてきた。
「クロウ、お祖父様だよ?」
え? お祖父様?
「クロウティアぁぁぁ、おじいちゃんだぞぉぉぉ」
白熊お爺さんの抱っこは暫く続いた。
◇
現在『ロード』クラス棟の三階に来ている。
僕と隣にディアナ、そして向かいにセレナお姉ちゃんと白熊お爺さんだ。
「こほん、初めて会う孫に感動して、ちょっと羽目を外したわい」
ガハハハッと豪快に笑うのが特徴な白熊お爺さんだった。
「お祖父様、そろそろクロウティアにも分かるように説明してあげませんと」
「おお、そうだな」
セレナお姉ちゃんに言われ、白熊お爺さんが僕を見つめた。
「儂はフローラ・エクシアの父であるジョゼフ・ブレインじゃ」
えええええ!?
「お母さんのお父さん!?」
「うむ! クロウティアの爺になる!」
「お……おじいちゃん!?」
「おじい……ちゃん、だと!?」「クロウ!」
二人が驚いた。
どうしたんだろう??
「お祖父様、ごめんなさい、クロウティアはあまり貴族らしい振る舞いが出来てないんです」
あ、そっか……。
「ごめ―」「ガハハハッ! 儂がまさかおじいちゃんと呼ばれる日が来ようとは!」
おじいちゃんが嬉しそうに笑った。
「クロウティア、これからはこの爺をおじいちゃんと呼んでくれないかい?」
「えっ!? いいんですか?」
「うむ! 儂には沢山の孫がいるが、皆お祖父様と呼んでおる、だからおじいちゃんと言われて驚きはしたが……親しみやすくて良いではないか! ガハハハッ!」
おじいちゃんの豪快な笑い声で、僕も何だか嬉しくなった。
セレナお姉ちゃんは呆れている。
「うん! これからよろしくお願いします! おじいちゃん!」
「おう! まさかクロウティアがこんなに元気だとは……本当に嬉しかったぞ」
「そう言えば、おじいちゃんは今日どうしてここに来たんですか?」
「うむ、儂はな、クロウティアが病気だと聞かされておった。しかも相当な病弱らしく、会わないで欲しいとずっと言われておったのじゃ」
確かに僕はずっと病気だと発表していたからね。
「でもどうしておじいちゃんにまで……?」
「それは儂も知らん」
どうしてなんだろうね。
「先日、アカバネ商会の奴らの新聞で、クロウティアが王都学園に入学しており、しかも史上初の『ロード』クラスに編入したと書いておっての、それでここまで来たのだ」
うちの新聞は今では王都全土に発売されているからね。
「まさか、あの小僧が隠しておったとは……これは一度シメてやらねばいかんな」
えっ? シメる? 誰に、何を……?
「お祖父様、きっとお父様にも事情が……」
「ふん! あの小僧はいつもコソコソとしている! 男なら正々堂々としてないとな!」
おじいちゃんはお父さんを小僧って呼んでいた。
「そもそもだ! クロウティアはこんなに元気にしているではないか!」
あ……おじいちゃんが怒った。
それを見てアワアワしているセレナお姉ちゃんが可愛かった。
いや、そういう場合じゃないんだろうけどね。
「そういえばセレナディアは『剣聖』だったな?」
「はい、有難い事に『剣聖』を賜りました」
「うむ! 素晴らしい! それでは、クロウティアはどんな職能なのだ?」
先程の優しい目ではない、獲物を狙う狩人のような目でおじいちゃんは僕を見つけてきた。
少し危機感を感じていると、
「クロウティアは……『賢者』ですわ、お祖父様」
「おお! クロウティアは『賢者』なのか! 姉弟で最上級職能とは素晴らしいな!」
「ありがとうございます」
セレナお姉ちゃんにつられて、僕もペコリと軽く頭を下げた。
そんな僕達におじいちゃんが告げた。
「それでは、二人共学園を卒業したら、我がブレイン領へ来るのだぞ!」