146.四階層
今日はウリエルのダンジョン四階層にやってきた。
三階層と違って深い森になっている。
四階で確認出来るモンスターは狼型のゴーレム、木の上に猿型ゴーレムだった。
狼型も猿型も三階層より数段強かった。
セレナお姉ちゃんとディアナがバッタバッタ斬っていたけどね。
数十分彷徨っていると、少し地面の揺れを感じた。
「近くに大型モンスターがいるかも知れない! 気を付けて!」
セレナお姉ちゃんの言葉に僕達は気を引き締めた。
少しずつ揺れが大きくなり、前方から現れたのは――
大きい象型のゴーレムだった。
何となく予想していたけど、ウリエルのダンジョンって動物がモチーフかな?
「最初、私が戦ってみるね!」
そう言いながら、リサが一足先に象型ゴーレムに近づいた。
そして、リサは――
杖で――
象型ゴーレムを――
殴った。
うん。
リサ……君、一応『聖女』だよね?
こう……魔法とか……華麗に倒す……とか?
あれ? 実は『聖女』って魔法職ではなくて物理職だったとか!?
実はリサは既にレベルも随分上がって、神々の楽園も最大掛かっており、素のステータスだけでも『剣聖』より強くなっている。
リサの殴りで象型ゴーレムの態勢が崩れた。
うわ……一撃で……
それから数回殴って象型ゴーレムが消えていった。
リサ――何かストレスでも溜まっているのだろうか?
数十分進んだ先に、三階層と同じく開けた場所にたどり着いた。
その先にはボスモンスターがいた。
大きいモンスターを想像していたのだが……。
目の前にいるのは赤色の象型ゴーレムで、大きさが本来の象型ゴーレムよりも五倍程小さかった。
「何だか、今回は小さくなったわね」
「しかも一体だけです」
「それじゃ、ここは私が先に行くね」
セレナお姉ちゃんが先に戦う事になった。
お姉ちゃんの初撃が放たれた。
しかし、お姉ちゃんが斬った剣の先には赤色象型ゴーレムがいなかった。
「っ!?」
そして隣から大きい炎が飛んできた。
お姉ちゃんは慌てて、大きな炎を斬った。
そのまま炎を斬れるんだ……。
その先に赤色象型ゴーレムがいた。
それから赤色象型ゴーレムは一定距離を維持し、大きな炎を吐いていた。
お姉ちゃんが数回炎を斬りながら近づこうとするも、ずっと逃げられていた。
「今回のボスモンスターは厄介だね」
「はい、素早い上にあの大きな炎が厄介です」
「中々素早いね、セレナさんが簡単に追いつけないって凄い」
そんな中、セレナお姉ちゃんが少し離れた。
「剣技っ!飛翔連斬!」
先日使った見えない斬撃を飛ばす技だ。
連斬だからかな? 数回剣を振っていた。
数秒後、炎が斬られ、向こうにいる赤色象型ゴーレムも真っ二つになった。
「ふぅ……今回の敵は厄介だったわ」
「お疲れ様、お姉ちゃん」
お姉ちゃんが厄介と言うくらいには強いのかも知れない。
四階層ボスモンスターともなると中々強いんだね。
それから暫く皆のレベル上げをしながらディアナの分のボスモンスターを倒した。
ディアナの場合も同じく、赤色象型ゴーレムは素早くて炎の遠距離攻撃をして逃げ回るタイプのモンスターでディアナも本気で追いかけていた。
体力は全然ないようで一回斬っただけで消えっていった。
そして僕達は屋敷に戻り、本日の狩りを終えた。
◇
次の日。
早速リサの分のボスモンスターを倒した。
「光の神よ! 御身の力を我に! リバースサンクチュアリ!」
リサの詠唱後、周辺一帯の地面に紫色の光が広がった。
ん? 何か体が凄く――重い?
リサはテクテク歩き、赤色象型ゴーレムを杖で殴って、一瞬で倒した。
その後、魔法が解かれると身体の調子が治った。
リサは更に『サンクチュアリ』という魔法をかけてくれた。
「リサ、さっきの魔法ってどんな効果?」
「あれねー、私の周辺に動けなくなる結界を張るの、あのモンスターくらいなら多分動けなくなると思ったから」
だから身体が重くなったのね。
しかし、こんな凄い魔法使えるのに、敵倒す時は結局殴るのね。
ん? 殴った方が楽? 詠唱唱えるのが面倒――ってこの子……昔から嫌いな事を面倒がるのは変わってないね。
その後、僕達は軽く狩りをしながら昼食を取り、最後の僕の番になった。
「くろにぃ! 今日はどんな魔法見せてくれるの!」
「ん? まぁ――早いみたいだし、さっきのリサと同じ戦法にしようかなと思ってるよ」
「なーんだ、もうちょっと派手にやってもいいのに」
残念がるリサを宥めて、僕は再度現れたボスモンスターに向き合った。
そう言えば、僕ってステータス精神値がかなり高い方のはずだ。
今までだと回復魔法くらいでしか使ってなかったけど、このステータスって対魔法用ステータスだったよね。
僕は赤色象型ゴーレムにゆっくり近づいた。
赤色象型ゴーレムも反応し、僕に炎攻撃を仕掛けてきた。
そして炎攻撃が僕に直撃した。
「えええ!? クロウ! 何で避けな――」
驚いているセレナお姉ちゃんに軽く手を振ってあげた。
「大丈夫ー! ちょっとステータス試しているだけだから!」
そう言い、僕はまたゆっくり赤色象型ゴーレムを追いかけた。
勿論、炎攻撃を撃たれるが――全く効かない。
HPを確認したけど、一切減っていなかった。
- スキル『魔法反射』を獲得しました。-
「ん? メティス~、このスキルってどんなスキル?」
【そのスキルは自分の精神ステータスで完全無効出来る相手の魔法をそのまま返せる魔法なの!】
「なるほど! ありがとう!」
折角なので、新しい手に入れたスキル『魔法反射』を使ってみた。
赤色象型ゴーレムから放たれた炎攻撃が僕にぶつかる寸前に、不思議なバリアに弾かれて赤色象型ゴーレムへ戻っていった。
おおお~これ何だか楽しい!
僕は軽く走って赤色象型ゴーレムを追いかけた。
赤色象型ゴーレムが僕から逃げながら自分で撃った攻撃が跳ね返されて来てアタフタしている。
少し遊んだので、終わらせるか~。
「『スタン』」
雷属性魔法で赤色象型ゴーレムを動かなくさせた。
あとは、近づいて闇の手でペチっと叩いて倒した。
◇
◆アリサ◆
ウリエルのダンジョン四階層。
そのボスモンスターを倒すのもこれで四回目。
最後はくろにぃの番だった。
くろにぃは凄い魔法使いで、この戦いでどんな魔法を見せてくれるのか楽しみだった。
そんなくろにぃから魔法を見せてくれないと言われて少し落ち込んだ。
そんなくろにぃの戦いは――
最初ボスモンスターの炎攻撃を直撃で受けるも笑いながら手を振っていた。
ぶ、不気味過ぎだよ……くろにぃ……燃えてるのに笑顔で手振らないで……。
ゆっくり相手に向かって笑顔で歩いて追いかけてる……燃えながら――。
今度は何かを思いついた表情になって……あれ? 炎攻撃を跳ね返した?
え? 新しいスキルを手に入れた? ……??
あ、くろにぃ……そんな笑顔で追いかけて相手の炎を跳ね返して……
折角、あんなにカッコいいのにやってる事が――怖い。
ん? 飽きた?
えーっと……『スタン』!? ……それってそんな簡単に!?
あ、『闇の手』……あんなカッコいいのに……禍々しい……。
あの……くろにぃ? せめて、笑顔はやめよう、怖いよ。