131.僕の職能
その日の夜。
エクシア家の緊急家族会議が開かれた。
仕事で忙しいはずのライ兄ちゃんも、学業を頑張っているデイ兄ちゃんも、両親もお姉ちゃんも集まってくれた。
いつもの旅館で、少し重い空気だった。
家族皆が不安そうな顔になっている。
その家族を前に僕がいた。
そんな中、真っ先に僕が口を開けた。
「今日は急にごめんなさい。実は……話さなくちゃいけない事があって……」
皆、僕を見つめた。
「以前話したように、僕とリサとセシリアさんが前世で家族だったって話はしたけど……、実はその続きと言うか……本当なら、もっと早く話さなくちゃいけない事があって……」
僕は家族に土下座をした。
「まず先に謝らせてください! ごめんなさい!!!」
皆の表情は見えないけど、きっとキョトンとしてそうだ。
だって、見なくても分かるもの、家族だから。
皆、静かに見守ってくれた。
土下座から姿勢を正した。
「実は……僕の職能は『賢者』ではないです!」
……
…………
……………?
あれ? 皆、表情が変わらない。
「クロウ……まさかそんな事くらい知らないとでも……?」
あれ? お父さん? 知っていたの?
「クロウくん、『賢者』はね、回復魔法は使えないのよ?」
えっ!? そうだったの? お母さん。
「別に『賢者』でもそうでなくても、クロウくんは凄いしな」
ライ兄ちゃん……。
デイ兄ちゃんも「うんうん」と大きく頷いていた。
「私、一応『剣聖』だけど、いくらなんでも『賢者』に剣で負けたりはしないわ」
家族全員「うんうん」と頷いた。
あれ???
「クロウがもしその事で悩んでいたのなら、早めに気づいてあげれなかった僕達にも非がある、『職能』は大事だけど、そんなモノがあってもなくても我々は家族だからね」
お父さんの言葉で僕は涙が溢れた。
なんか、皆を騙していた気がしていたから……。
「それで、クロウくんの職能はどんな職能なの?」
お母さんが気を取り直して聞いてきた。
「うん、実は『アザトース』って職能なんだ」
「『アザトース』??」×5
「うん、詳しくは僕も知らないけど、魔法系統の職能なのは間違いなさそう」
「それはもう……あれだけ魔法が使えるからね」
「だから色んな魔法が使えるの?」
「あ、お姉ちゃん、それは多分職能専用技だよ」
「職能専用技??」×5
「うん、この前お姉ちゃんに掛けたあの補助魔法」
「神々の楽園……だっけ?」
「うん、あれ最大値で掛ければ、『剣聖』と同等のステータスになるからね」
「「「「『剣聖』と同等!? 魔法をかけるだけで!?」」」」
「うん、但し色々条件がいるんだけどね」
自身の最高ステータスと同じ数値の分までしか掛けれないから、誰も彼も構わずに『剣聖』と同等には掛けてあげられない。
「そう言えば、先話した『職能専用技』って何なの? クロウくん」
「あれ? 皆は『職能専用技』ってないの?」
「専用スキルならあるわよ、でも技という言葉自体初めて聞くわね」
ええええ!?
専用技って全ての職能が持っている訳ではないの!?
「え? 皆、ステータスボードの一番下に『技』の欄ってないの?」
「ないわよ?」「ないね」「ないかな」「ないない」「ないわ」
ええええ!?
どういう事!?
「しかし、これだけ魔法が使えて、専用技? となるモノも使えるなんて……クロウくんって凄いわ」
「おお、自慢の息子だ。勿論ライくんやデイくん、セレナちゃんもな!」
「いつも規格外だものね、うちの弟くんは」
「今学園で一番の噂になっているのもクロウくんだしな」
「魔道具もすぐ作れるし、『賢者』でも足りないわね」
あはは……何だか家族の優しさに毒気が抜ける感じがした。
それから僕達は皆、仲良く風呂に入り、ゆっくり同じ時間を過ごすのだった。
◇
次の日。
『ロード』クラス棟に僕とセレナお姉ちゃんとディアナとアリサが集まった。
「そう言えば、まだアリサちゃんからは何も聞いてなかったわね」
「へ?」
リサが何の事? 見たいな顔になった。
「まずはクロウ! アリサちゃんに『神々の楽園』を掛けて頂戴」
うっ、セレナお姉ちゃんが色々吹っ切れたようで、グイグイ来るようになった。
「げっ……、くろにぃ……三千くらい……」
「(ジー)」
「あう……ごめんなさい、四千で……」
「(ジー)」
「ひぃー、い……一万……」
「(ジー)」
「く……くろにぃ……助けて……」
セレナお姉ちゃんが、リサの目の前でジロジロ見ていた。
あんな至近距離で見つめられると大変そうだ。
お互い可愛いので、見ている僕は眼福だけど……。
「そもそもリサのレベルって幾つになったの?」
「えっ……、えっと~三十……かな?」
「(ジー)」
「ひぃぃ、よ……四十」
「(ジー)」
「も、もう!ごめんなさい!全部嘘です!」
「ほらね、やっぱりそう思ったわ。だってクロウと同じで、嘘つくとすぐ分かるんだからね」
嘘発見器……いや、嘘発見人セレナお姉ちゃんは流石だった。