125.神獣?
「では最後はリサだね」
それを聞いたリサが微妙な表情をした。
「え……っと、私もそれ掛けて……貰えるのね?」
「勿論だよ」
「そ、そっか……、私はまだレベルも全然上がってないから、あんまり高くないよ?」
「そっか~、それならレベリングにでも行こうか」
「狩りですか! いいですね、アリサちゃんと狩りに行けるのは嬉しいです」
意外とディアナが喜んでくれた。
「私も嬉しい!」
リサとディアナが仲良くなったのは僕としてもとても嬉しい事だ。
◇
もう夜も遅かったので、このまま『ロード』クラス棟で泊る事になった。
食事等は異次元空間に大量に入っていたので、問題なかった。
二階に設置した『強化シャワー室』で全員身体を流した。
『強化シャワー室』とは、疑似お風呂にしたモノだ。
通常シャワー室は箱の中に入り、上から水が注がれるモノだ。
強化シャワー室は通常より二倍程大きくて、入口は少し上に付いており、入室するのに階段を上らなければいけない。
その入口に入ると、箱の中には階段で降るように作られており、最初は通常シャワー室同様、上から水が流れる。
その後、もう一つの魔石を押し込むと……何と! 階段の下に降りた部分に水が貯まる。
つまり、お風呂モードに出来るのだ。
広さは二人がぎりぎり入れるかと言う広さだが、一人だと泳ぐまではいかなくても十分ゆったり出来る大きさだ。
実はこの『強化シャワー室』もとい『お風呂室』は、セレナお姉ちゃんから「クロウ! どうしてシャワー室で水浴びは出来るのに、風呂は付いてないの!」と言われて思いついたモノだった。
「くろにぃ……一つ言ってもいいかしら」
「どうしたの? リサ」
「…………、こんな便利な魔道具が簡易だなんて……贅沢過ぎだよ」
どうやら、リサとしては便利過ぎるのも問題らしい。
「だって、便利なんだもの……」
「くろにぃ……、これ便利過ぎて、貴族より贅沢してそうだよ……」
そんな僕達の見ていたセレナお姉ちゃんがクスクスと笑った。
「アリサちゃん、クロウには何言っても無理だわ。昔から思いついたモノ全部使ってるから」
「本当ですか!? 凄い……」
「あ、アリサちゃん。クロウ様に欲しいモノ言うと作ってくださるのでおすすめだよ?」
えええ!? ディアナまで……。
「そっか! こんなに作ってるんだもん。私も思いついたら、お願いしてみようかしら」
「因みに、提案から生まれた魔道具が画期的なモノだと、そのままアカバネ商会で売るようになるよ」
「ええええ!? そっか、アカバネ商会ってそういう商売もしているんだっけ」
「魔道具は全部賃貸だけどね~、僕が作った魔道具って、値段が付けれないくらい高くなるみたいだから」
「あぁ……確かに……通常の『シャワー室』だけでもとんでもないもんね……」
「うん、でもあの水って、ソフィアがずっと作り続けてくれてるけど、無限に使える訳じゃないからね」
「えっ!? あの水って無限に出るんじゃなかったの!?」
「あはは~リサ、水が無限に出るなんてある訳ないじゃん」
リサが複雑な表情になった。
「どうしよう……私……水……凄く一杯使っちゃった……」
「ん? 大丈夫! 世界にある『シャワー室』の水をずっと使いっぱなしにしても百年は出るから」
「ひゃ……百年!?」
「うん、ソフィアがここ数年、作り続けてくれてるからね~、本当に感謝しかないよ」
「う~ん、そのソフィアちゃんって、くろにぃの従魔だよね……」
リサはいつの間にか僕の膝の上で、なでられているソフィアを見た。
「えっと、つかぬ事を聞くんだけど……毎日頑張ってくれているソフィアちゃんのご褒美って……まさか……」
「うん、ソフィアから毎日こうして撫でてくれって言われているの」
「あぁ……やっぱり……」
リサが呆れたように話した。
セレナお姉ちゃんはクスクスと笑いながら僕達を眺めている。
「私、従魔の事は良く分からないけど……従魔というか、神獣をそういう風に従えてるのは、くろにぃしかいないと思う」
「ん? 神獣って何?」
「ええええ!? だってソフィアちゃんって『アルティメットスライム』なんだよね?」
「そうだよ?」
ソフィアが嬉しそうに揺れていた。
ひんやりして触っていると気持ち良い。
「『アルティメットスライム』って――神獣の一種……だよ?」
「へぇー! ソフィアって凄いんだね!」
おおっ、ソフィアも嬉しそうに更に揺れていた。
「はぁ……、世界で神獣を『凄いんだね~』って言えるの、くろにぃだけよ……」
そうなのかな? 神獣が何かは分からないけど、ソフィアはソフィアだしな。
「アリサちゃん? その神獣って何?」
ディアナがリサに聞いた。
そう言えば、僕もちょっとだけ気になる。
「神獣と言うのは、モンスターの最上位種で高度な知能を有していて、高度な能力を兼ね備えた存在の事よ。本来モンスターの知能はあまり高くないから、基準としては人族より知能が低いとされているの。でも神獣は人族よりもずっとずっと知恵深く強いから、昔の人は彼らに尊厳と尊敬を込めて『神獣様』と呼ぶようになったの」
「ソフィアちゃんがその神獣様なのね! いつも近くにいたから全然気づかなかったけど、クロウ様の従魔はとても凄い存在なのね」
「それはもう……、そもそも神獣を従魔にしてる人なんて……くろにぃくらいだと思うよ?」
「確かにソフィアは何でも出来るから、その神獣様は納得出来るかな!」
「ええ、寧ろ神獣様を、そう言う事に従わせてるのはある意味凄いわよ……」
嬉しくなった僕は、ソフィアを更に撫でてあげた。