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121.編入の発表

 『アカバネ新聞』


 それはグランセイル王国を大きく変えた。


 元々、世界の新聞と言うのはあったが、高価な上に中身も一か月くらい、時が過ぎたモノだった。


 しかし――。


 新星の如く現れた『アカバネ商会』。


 次々、新しい商品を開発し、最初は買取専用と唄っていたモノの、『ライブ』が爆発的に急成長。


 それから『アイドル、ナターシャ』の出現と共に、彼女をモチーフにした商品はとどまることを知らず、売れ続けた。


 更に『プラチナカード』なんてモノを作り……、王国内だけにならず、共和国をも飲み込み、大陸の半分の資材が『アカバネ商会』へ集まった。


 それから僅少の数年……。


 次々新しい商品を出したその商会は、最早大商会となっていた。


 そんなアカバネ商会が満を持して出したのは――。


 驚くべきモノだった。


 それが『アカバネ新聞』と『アカバネ手紙』だった。


 手紙業が先に発足し、王国全土に安価で手紙を届ける事が出来るようになった。


 しかも驚くべきはその速さ。


 何とたった二日程で届くのであった。


 送れるのは手紙のみだが、それでも時代が変わった。


 情報を簡単に伝達出来るようになった事で、王国内では活発な情報伝達が出来るようになっていた。



 そしてその直後に出たのが『アカバネ新聞』だ。


 アカバネ新聞の最も強味は、価格の安価過ぎる事だ。


 この世界で紙自体は安価であるが、そもそも新聞とは『複製』ではなく『複写』だった。


 だから一冊一冊作成に時間がかかる大問題があった。


 しかし、アカバネ商会が開発したという……『複製魔道具』となるモノが完成したと発表された。


 それがどんな魔道具なのかは、誰も知らない、アカバネ商会の極秘情報だった。



 しかも、このアカバネ商会。


 従業員がとんでもなく好条件だと噂だ。


 誰も辞めないし、悪口一つ聞いた事がないという。


 そんな商会から情報が洩れるはずもなく……。


 しかし、こんな大商会が唯一のオーナー持ちだと言う。


 一体そのオーナーは誰なのか……。


 その秘密は永遠の謎とされている。



 そんな『アカバネ新聞』だが、安価だけが売りではない。


 何と言っても出来事の新鮮さだった。


 当日起きた事件ですら載っているのだ。


 この事を調べた王国側も舌を巻いた。


 何故なら、全て事実だったからだ。


 その事をきっかけに『アカバネ新聞』は『真実の紙』とまで呼ばれるようになり、その知名度は王国内で最高のモノとなっていた。


 隣国の共和国でもアカバネ商会の参入をお願いした形で共和国と王国、両方の情報が新聞に載る事になった。




 そして本日、


 とんでもない大ニュースが発表された。



 『エクシア家の三男、クロウティア・エクシア様、実はご病気は嘘であり、その類まれな才能により、伝統ある学園アルテミスにて、ナイトクラス魔法科Cクラスより、ロードクラスに編入決定!』


 そしてその中身には、


 『学園アルテミス創設以来最大の過ちがあり、クロウティア様の力を見誤ったため、ナイトクラスと判定するも、一人で全ての戦士科生徒を圧倒し、学園側がその非を認め、全職員が本人に土下座で頼み込み、今回ロードクラスに編入が実現した』


 と大々的に書いてあった。



 この大事件は瞬く間に王国と共和国内に広まった。


 しかし肝心なクロウティアの職能については書いていなかった。


 それでまた謎が謎を呼び、また病気が嘘だった事の発表により、クロウティアの名は王国内に凄まじい速度で広まるのであった。




 ◇




 ◆王都ミュルス王城内◆


 その部屋は高価な調度品が並んでおり、見た者は誰でもその部屋に置かれている品が高価だと分かる程に、高価に飾れた部屋だった。


 そこには四十代程の男性が一人、六十代程の男性が一人、二十代程の男性と女性が一人ずついた。


 そして彼らの座っているテーブルの前に『アカバネ新聞』がそれぞれ全員分置かれていた。


「ミハイル卿、この新聞の中身は誠であるか?」


「ははっ、かの商会の新聞でございます。偽り等――ないでしょう」


 六十代程の男性にそう言われた四十代程の男性。


 この男こそが、グランセイル王国の国王、若き猛牛闘戦士『アルデバラン・グランセイル』だった。


 まだ齢四十の若き国王だった。


 そしてその向いに座っているのは、


 白髪と風格は只者ではない雰囲気を纏っていた彼は『イレグリ・ミハイル』王国宰相だった。


 その隣に座る男性は『シグマ・グランセイル』女性は『リイナ・グランセイル』第一王子と第一王女だった。



「アグウスめ…こんな隠し玉を持っていたとは……、あの三男は役立たずと聞いていたのだが」


 王は眉間に(しわ)を寄せた。


「お父様、アグウス様の事です。きっとお子様を自由にさせたいと思っての事でしょう」


「ああ、あやつならそうやりかねんからな……、シグマ、お前はこれをどう見る?」


 どう見る……と言うのは、この新聞に載っている彼が、味方になりえるのか、はたまた敵となりえるのか、それを判断しようとしているのだった。


「はい、お父様、私の見立てですと彼とは敵対しない方が良いかと」


「ほぉー、それはどうして?」


「はい、現在あの学園の『ロード』クラスには実姉がおります。仮に仲が悪かったり、エクシア家と疎遠な子供だったら、『ロード』クラスには編入出来ないはずです。恐らく姉も承諾している事でしょう」


「うむ、それは俺も同じ意見だ、ミハイル卿とリイナはどう見る?」


「同じく」「同じですわ」


 それを聞いた王は「そうか」と一言話し、新聞に書いてある事を目で追った。


 クロウティア・エクシア。


 王都学園アルテミス史上初となる『ロード』クラスに編入。


 果たして、彼はこの王国にとって台風となるのか太陽となるのか、王は期待と不安を抱いた。

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