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98.入学試験

 入学式が終わり、僕達生徒は全員試験会場へと向かった。


 ディアナは僕の従士として来ているので、試験は無かった。


 自分が受けたいクラスの試験場所に行く事が出来るようだった。


 色々迷ったけど、魔法科に向かった。


 先程生徒は一千人程いたのに対して、魔法科は六十人くらいしかいなかった。


 魔法科は魔法が使えれば誰でも入れるのに、そもそも魔法が使えるのはこれしかいないというのがその人数しかいない証拠になるだろう。



 そんな中、魔法科に向かう直前、僕の前に数人の男生徒が立ちふさがった。


「おぉー、こんな綺麗な獣族を連れたお坊ちゃまがいるとはー、貴様良いご身分だな?」


 真ん中で一番偉そうにしていた男の子が言い放った。


 獣族と言うのは、人族が獣人族を貶す時に使う言葉だ。


 そんな言葉を投げられ、すぐに彼に反論しようとした。


 しようとしたんだけど……。


 ――出来なかった。


 身体が震えて声も出なかったからだ。


 「アーハハハハ、なんだこいつ、怖くて震えてんじゃん!」


 彼らは僕を見て大笑いをした。


 ディアナが怖い顔になって彼らを睨んだ。


「おいおい、獣族の分際で我らに盾突く気か? 貴様ら俺様が誰か分からないのか?」


 そんな事を言いながら自慢げに名前を話した。


「俺様はエレン・ミハイル、ミハイル伯爵の息子だぞ!」


 ミハイル伯爵はこの国の宰相様だ。


 宰相様の息子さんだったようだ。


「おい、そこの獣族、少し可愛いな、今夜俺様んとこに来い」


 それを聞いたディアナが遂に我慢の限界になった。


 しかし僕がただ震えて何も言えなかった。


「貴方様が何処の誰かなんて存じませんが、私の主はクロウ様だけですのでお断りします」


 それを聞いたエレンが怒りだした。


「はあ!? てめぇらに選択肢なんてねぇんだよー、そのてめぇの偉いご主人様は震えて何も言えねーじゃねーか、そいつ何処の家のもんだ!」


「………、こちらはクロウティア・エクシア様ですよ?」


 答えられない僕に代わりディアナが答えてくれた。


「はっ! こいつがあの役立たず(・・・・・・)のクロウティア様かよ! アハハー、それは何も言えずただ震えてても納得するな!」


 周りの男生徒達も一緒に笑っていた。



 勇気を出さなくちゃいけない。


 前世の事で足を引っ張られて、ディアナも困るし、セレナお姉ちゃんにも顔向けが出来ない。


 でもどうしても身体が言う事を聞いてくれなかった。


 たった一言なのに、どうしてそれがこんなに言えないのだろうか。


 僕はもう既に十分に強いはずなのに、守りたい者も守れないなんて力があっても何の意味もないじゃないか……。



 その時、ふとお父さんの言葉を思い出した。


 僕には友人がいない、それは対等で話合える相手がいないって事だ。


 こうして対等な相手から攻撃された時、僕には何も出来ないから、それをお父さんも薄々気づいていたのではないだろうか。



 そんな事を思っていると後ろから声がした。


「貴方達、いい加減にしなさい! この学園に地位は関係ないはずですよ!」


 彼女は綺麗な金色の髪に綺麗な翡翠色の目をした女生徒さんだった。


「あん? 貴様のような普通の平民分際で」


「ッ……この国の貴族も大した事ないんですね」


「はあ? お前、何処の誰だ」


「私は……別に大した者でもありません、只の……アリサです」


 彼女がそう名前を名乗った。


 そうしているうちに後ろから教師が来てくれた。


「これは……ミハイル伯爵家の方ですね、たしかエレンくんでしたね……貴方はミハイル伯爵家に泥を塗るつもりですか?」


「くっ、……お前ら行くぞ」


 教師の登場で彼らは戦士科の試験場へ去って行った。


 去り際、「覚えてろよ役立たず野郎」と言われた。


 そんな彼に僕は何も言えず、向き合う事すら出来なかった。


 僕の顔には冷や汗だらけになってしまった。


「これだから権力に自惚れてる貴族は大嫌いね」


 と言いながら彼女は魔法科へ向かった。


「クロウティアくんでしたね、今回は大変でしたね、これから試験会場へ向えますか?」


 教師さんが気遣ってくれた。


「問題……ありません、大丈夫……です」


「そうですか……確か貴方様はご病気でしたね、あまり無理なさらずに」


 と教師さんも去って行った。



「クロウ様、申し訳ございません……、本来なら私が剣を抜きたい所ですが……それではクロウ様にご迷惑になるとの事でしたので……」


「い、いいんだ……ありがとう……ディアナ……」


 ディアナに心配そうに見られながら、僕は何とか魔法科へと入って行った。



 先程見かけていた生徒さん達もどうやら試験が終わったようで、会場には僕とアリサさんのみだった。


 職員の先導でそれぞれ的に魔法を撃つようにと言われた。


 魔法さえ撃てれば合格だ。



 アリサさんはスラスラと詠唱を唱え魔法を放った。


 その後、僕はディアナの介護の元、魔法を放ち合格した。


 病気と伝っていたため、詠唱が聞き取れなかったと言う事でナイトクラスの魔法科になった。




 ◇




 ◆エレン・ミハイル◆


「くそっ、あの役立たず野郎の分際で、あんな可愛い獣人族の女の子を――――なんて許さね! 絶対後悔させてやる!」


 エレンはクロウに対抗心を燃やすのであった。

もし時間の余裕のある方は明日の夜の連投にお付き合いください。よろしくお願いいたします。23:47からの予定です。

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