プロローグ
バスケが大好きな少年アキラは、小さな頃から毎日バスケをしてきた。
努力を重ね、両親には常に褒められてきた幼少時代。将来はきっとバスケットボール選手になれるものだと信じて疑わなかった。
しかし、その夢は周りからに否定されていくことになる。小さな頃からの努力により、標準以上の運動神経はあったものの、それはクラスでも1番になれない程度のものだったのだ。
バスケットにおいて重要とされる、ハンドリング・シュート力・敏捷性・ディフェンス力・パススキル・跳躍力、あらゆる能力で尖った点はなく、監督の目には留まらない選手だった。
中学3年の最後の大会、チームは初戦敗退をし周囲が受験勉強を始める中においても、アキラはバスケットボール選手の夢を全く諦めていなかった。
強豪校から推薦は絶望的なので、バスケットの強い学校に一般入試で入学するくらいにしか考えていなかったが、受験を考えていたのは地獄の上下関係・練習で有名な高校であった。
「高校はバスケットではなく、将来のことを考えて選んだらどうか?」と両親。
「さすがにバスケットだけを考えて生きていくのは無理じゃない?そろそろ現実見ろよ。」とチームメイト。
それでもアキラは周囲の声をよそに、バスケットボールの強豪校に一般入学を決めた。
一般入学と推薦入学の選手では、練習メニューが全く違う。
学校としても、"推薦入学以外の入部を認めない"というのは表向き避けたかったらしく、一般入学の選手には厳しいメニューを課して自主的な退部を促している状態なのである。
バスケットボール選手としてのアキラに大きな才能はなかったが、その強靭な根性だけはチームでも1番だった。一般入部の選手として唯一退部することなく、厳しい練習に耐え抜いた。
周囲にも認められはじめたアキラは、最後の大会でベンチ入りを果たす。
そして、全国大会をかけた決勝戦の試合中、ラスト5分で途中出場したアキラは、リバウンド争いで激しく頭部を損傷してしまう。
救急車で運ばれる中、朦朧とする意識。自分が助からないことが感覚的に分かった。
"ああ・・もっとバスケットをしたかったなあ・・"
アキラの意識はそこで途切れた。