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1リップル マリーシャ、旅の友の冒険者と出会う。

 マリーシャ・リップルは、大きな瞳で、窓の外に沈む夕日を見つめながら思う。

 いつか、あの地の果てまで行くのだと。

 伝説のヤバメ・ドラゴンに会うのだと。会って力いっぱい願い事をしようと。

 彼女は、森深い小さな宿「リップル」の一人娘、夢見がちな宿屋の少女。


 ある夕方、因縁(いんねん)をつけてきたモンスターとの闘いで傷ついた、ひとりの冒険者がたどり着いた。

 バタン! 凄い音でドアが開いた。そこへ倒れこむ、青い目をした若きハンサムな冒険者、オルファン。

「今夜一晩頼む……あと医者もだ」


「まあ、冒険者さん、しっかりして、そこで寝ないで、えいえい」

 マリーシャ・リップルは、スープ鍋を掻き回していたお玉で、冒険者を気付けにポクポク殴ってみた。


 冒険者は意識を失いそうになりながらも、顔を伏せたままじっと殴られるままにしていた。

 いつまでもポクポクが終わりそうにないので、キレて起き上がった。


「頼むから医者呼んでくれ、疲れて寝てるんじゃない、しにそーなんだ!」

「ううん? とても、元気一杯に見えるんだけど」

「そのお玉のクリティカルヒットの連続で、おかげさまでな!」

 そしてまた、パタっと倒れこむ。


「いいわ、お医者様ね、2日半待ってね、山のふもとまで、アルゴに乗って呼びにいくわ」

 そうして、部屋の隅を指をさすと、そこにアルゴなる巨大な陸亀が出番を察知し、やる気まんまんに準備体操を始めた。


「冗談はやめてくれ、もっと早い動物はいないのか」

「特急便は高いの、また今月動物が増えたのでピンチで」


 マリーシャ・リップルは大の動物好き。

 彼女が歌うと、森の動物がわんさか宿にやってくる。そうして適当なのが宿と彼女を気に入ると勝手に住み着いてしまうのだ。

 冒険者は床に伏せったまま、懐から金貨が詰まった小袋を床にドサっと置いた。


「まあ、大変! 大急ぎでお医者様呼ばなきゃ!」


 マリーシャ・リップルは窓を開けると、大きな声で

「じぇふぁーそん! たいへん、大変!」


 と、夕方のお空に向かってそう叫ぶと、すぐに()はやってきた。

 でっかい大鷲のじぇふぁーそん、名前負けしない、胸筋隆々の猛禽(もうきん)が、リンゴの樹の枝を破壊しながらとまった。


「ケガをしてる、お客様がいるの! ドリトン先生を急いで呼んできて! お願いね!」


 じぇふぁーそんは、スチャっと彼女に敬礼(けいれい)すると、羽根を大きく羽ばたかせて山のふもとに向かった。ものの五分と経たずに、(くちばしに)に何か吊り下げて戻ってきた。


「なんじゃー、ワシは晩酌中じゃ! マリーシャ! またどーでもいい用事で」

「先生、ケガをしてて、お客様がいるの! 珍しく!」


 息も絶え絶えな冒険者は、手元が危なっかしい、酔っぱのドリトンの治療を受けながら、何やらマリーシャに向かって(つぶや)いた。


「お前、ワザとやってるだろ」


 ――マリーシャ、旅の友の冒険者と出会う。 1リップル。


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