待てや!
「ハァーイ、ジョージィ」
「ジョージじゃない。今日はいきなり何なんだ。というか、その呼びかけは不特定多数には通じるものじゃないだろうが」
「ノリが悪いわね。新聞紙の船の代わりにクレジットカードを落としたり、風船受け取って引きずり込まれたりしてちょうだい」
「絶対嫌だ。特に前者」
「今日は物語の導入にはインパクトが大事だという話よ」
「つなげ方が雑ぅ」
「読者を引き込むには第一印象が大事よね。だから冒頭に、印象に残りやすい描写を作るのはとても大切よ」
「印象ね。例えばどんな?」
「ピンチや謎を発生させる、エログロを置いてみる、なんかが代表的かしら。ミステリーとかなら分かりやすいわね。最初に事件が起きて、犯人と被害者が発生するっていうやつ」
「ああ、確かによくあるなあ。場面的に緊迫感あるし、『これからどうなっていくのか?』っていう部分がすごく気になる」
「デメリットもあるけどね。犯人と被害者しかいないと、『主人公が誰なのかが分かりづらくなる』し。そもそもやりすぎるとかえって物語に入り込みづらくなるわ」
「というと?」
「例えばいくらインパクトがあるからって、いきなり性行為から場面がスタートしたら、読者の数はかなり変わるでしょう。他にも、延々と臓物の描写だけ書かれてあるとか」
「確かに、そんな導入は人を選ぶだろうなあ……気にしないで読む人とか、かえって面白がる人ももちろんいるだろうけどさ」
「ライトノベル的な発想だと、主人公がいきなりの異世界でピンチに陥るというスタートはインパクトあるでしょうね。ありふれた手法だろうけど」
「最近だとむしろ、助けに来る役を主人公がしている気がする」
「印象に残せるならどちらでもいいんじゃない? 導入は『まず読んでもらう部分として大事』なだけだし。そういう意味ではギャグなのかシリアスなのか、というのもけっこう読んでもらえる数が変わりそうよね」
「実際どっちが有効なんだろうか?」
「ギャグの方が色んな人に気軽に読んでもらえそうな印象はあるわね。でも最初からシリアスなら、ギャグの後にシリアスを入れる場合より白けさせない、雰囲気を壊さないで進めやすいんじゃないかしら」
「確かに、ギャグスタートの後にいきなりシリアスを連打され続けたらきつそうだ。物によるんだろうけど」
「当たり前だけど、自分の書き方や作品の傾向に合わせなきゃダメってことね」
「なるほど。……しかしどうしてここ二、三日、急に創作論めいた話題になっているんだ?」
「それはね、ジョージ。毎日書けるネタなんて全然ないからよ」
「堂々と白状するな」