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84.王女誕生の瞬間

 大階段の上から一望できる広間では、着飾った淑女と洗練された紳士たちが、楽団の奏でる音楽に合わせてクルクルと舞っています。

 それを歓談しながら、食事やワインを楽しむ人々。

 舞踏会は、社交デビューの時以来です。


 曲が終わった瞬間、大きな声が響き渡りました。


「ホドフリート・スペンダー・クベリーク国王陛下、ご入場!!」


 会場中の視線を独り占めです。

 盛大な拍手を送られ、国王陛下が大階段を降りて行きました。

 続いて、アンジェリカ様とユリウス王子の名が呼ばれ、その後が私たちです。


 名前が呼ばれると、それまでと違う騒がしさが会場をつつみました。

 多くの視線を浴びているのは、クラウス様です。

 比較的若い女性達は、ソワソワとした眼差しを彼に送っています。

 悪評が流れても、クラウス様の美丈夫っぷりは、女性の視線をくぎ付け。

 どうです。

 私の旦那様はカッコいいでしょう。

 えっへん。


 一方、そこそこ年配の方々は、なぜここにいるのかという戸惑いの反応です。


 それより、あの可愛い女の子がドワイアン夫人なんだな、うらやましいという視線を送ってきてもいいと思うんですが……。

 若い男性の視線は、アンジェリカ様に集中しています。

 別にいいですよ、イジケてなんかいません。

 くすん。


 ひととおり拍手が鳴り終わると、陛下が皆を見渡しました。


「こたびは、忙しい中、集まっていただき感謝する。今日は、皆によき報告をしたい。

 わが娘、第三王女アンジェリカ・スペンダー・クベリークと隣国ヘルツベルクの第三王子ユリウス・グリム・ヘルツベルクの婚約が決まったことを、ここに報告させてもらう」


 威風堂々とした陛下の言葉に、全員が耳を傾けています。


「この結びつきが、両国の未来にとって、よりよいものとなることをここに誓う。

 両国の安寧と発展を願って、二人に盛大な拍手を」


 聴衆から拍手が沸き起こります。二人の婚約は、皆様に受け入れられたようです。


 アンジェリカお姉様、幸せになって下さいね。


 しばしの時が流れ、拍手がおさまると、陛下は続けます。


「そして、もう一つ発表がある。こちらへ」


 陛下に呼ばれて、私たちは前に出ます。

 突き刺さるような視線を受け、足がすくみそうですが、顔には出しませんよ。

 みんなを魅了する笑顔で対抗です。

 お願いですから、魅了されてください。


「彼女は、辺境伯家嫡男クラウス・ドワイアンの妻、レティシア・ドワイアン夫人である。

 秘匿されていたが、彼女は王家の血を引く私の娘だ」


 秘匿とは、また濁しましたね。

 王妃以外に産ませた子供とは言い難いですけどね。

 しんと静まり返っていた広間が、ザワつきます。


「わが娘とクラウス・ドワイアンの婚姻が、皆に受け入れられ、王家と辺境伯家が、共に手を取り合い、この国を守ることをここに誓う!!」


 シンっと静まり返った会場の中、それを打ち破るように、パチパチパチと手を叩く音がしました。

 その主は、王太子テオフィル様です。

 紳士淑女たちは、周囲を窺いつつも、パラパラと拍手をし始め、やがて大きなものに変わっていきました。


 内情はともあれ、表立った反発はなさそう。

 レティシア王女、誕生の瞬間です。

 皆の者、頭が高い!! 控えおろう。

 すみません、調子に乗りました。


 さて、遊んでいる場合ではありません。

 問題はこの後です。


「シア」


 クラウス様が手を差し出し、私はそれに手を乗せます。


 ダンスの時間です。

 楽団の音楽が流れると、人々がさあっと移動し、広間の中央に空間ができました。

 アンジェリカ様とユリウス王子。

 クラウス様と私。

 2組だけのダンスが始まります。

 失敗は許されません。


 緊張ゆえ、猛烈に胃が痛いですが、それなりに踊れます。

 社交デビューの時も踊りましたし、兄姉様たちと猛特訓させられました。の割には、大きな舞踏会で踊るのは、これが二度目。

 努力と、成果発表の割合が間違っている気がします。


 私とクラウス様は、お辞儀をした後、踊り始めました。彼のリードは完璧です。

 鍛えている身体は、ブレることなく安心して身を任せられます。

 ちょっとくらい足を踏んでもビクともしないでしょう。


 わざと踏んだりしませんよ。


 隣でアンジェリカ様とユリウス王子も見事なダンスを披露しています。

 ええ、皆様、あの2人に注目してください。

 ここは、私に視線を向けなくてよろしくてよ。

 ホホホ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >それより、あの可愛い女の子がドワイアン夫人なんだな、うらやましいという視線を送ってきてもいいと思うんですが……。 なんて、ずうずうしい(笑) 以前、自分の顔を並顔と自称した人のセリフとは…
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