6.お酒には気をつけましょう
その日、夕食にもクラウス様は姿を現しませんでした。
お仕事が忙しいのか、愛人宅に行っているのかは知りませんが、夕食は大変おいしかったです。材料が新鮮なんですかね?
湯浴みを済ませ、もう寝ようとした時に来客です。こんな時間に誰ですか!?
「今戻った」
やって来たのは、クラウス様です。赤い髪に黒の軍服は、目の保養ですね。すてきです。見た目はピカイチです。
「おかえりなさいませ」
私は笑顔で迎えました。旦那様ですからね。
部屋の中に入ったクラウス様は、じーっと私の顔を見てきます。なんですか、気持ち悪い。
「仕事お疲れさまでした。……お酒でも飲みますか?」
お実父様は仕事終わりにいつもお酒を飲んでいました。クラウス様はどうでしょう?
「い、いや」
「あら、クラウス様は飲まれないのですか?」
「そうではない。……あまり強くないので、すぐに寝てしまうんだ」
ほう、それはいいことを聞きましたね。昨日の初夜でまだ身体中が疲れているんです。今日もとなったら嫌なので、酒を飲ませて眠っていただきましょう。
「少しくらいいじゃないですか。お仕事が終わった後の一杯は、きっとおいしいですよ!」
クラウス様を無理やりソファーに座らせて、使用人を呼びお酒を準備してもらいました。
「さあさあ、どうぞどうぞ」
赤ワインをグラスにつぎ、クラウス様にお渡しします。
「あ……ああ」
私は飲みませんよ。この国でお酒は18歳からです。まだなってないので、私は果実水をいただきます。うーん、おいしい!
「レティシア……」
「はい?」
「その、身体は大丈夫か……?」
うん? 一応気にはしていたのですか。驚きですね。泣いてもやめなかったくせに。
「少し疲労感がありますが、大丈夫です」
「そうか」
安心した顔していますね。
うーん、悪い人ではないのでしょうか。浮気しまくりですが。
「さあさあ、どうぞどうぞ」
ワインがなくなったので、つぎ足します。喉が渇いていたのか、クラウス様はごくごくと飲んでいきます。
2杯目にして、目がトロンとしてきましたね。やはり、あまり強くない様子です。
さっさと眠ってしまうがいいです。
「うっ……」
突然うなりだすクラウス様、次の瞬間、ダバーっと涙を流し始めました。……え、なにごとですか?
「あ……あ……」
あ?
「アンジェリカさまぁぁぁ!!」
「ひぇぇぇ!?」
号泣しています。鼻水出てます。ひどい顔です。え、なに?
アンジェリカ?
ああ、第三王女、アンジェリカ王女殿下のことでしょうか?
クラウス様の元婚約者ですね。
なぜ、彼女の名前を叫びながら、泣いてるんですか?
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