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53.可愛い子猫ちゃん

 やっとのことで、ドワイアン辺境伯領に戻ってきた私たちに、アンジェリカ王女殿下は、私の結婚式には出席しなさいよ! と言い残して、王太子殿下と共に王都へと帰って行きました。


 嵐のような御仁でしたが、これでやっとのんびり生活に戻れます。


 帰ってきた私に、素晴らしい朗報がもたらされました。

 なんと、猫のラウラちゃんが出産したのです。

 チビ猫ちゃんを愛でる機会を失うわけにはいきません。

 さっそく、バルとモニカを連れ、馬車に乗り込み孤児院に向かいます。


 迎えてくれた子供たちと一緒に、広間に到着。ラウラちゃんがいつも寝ている籠の中に、新たな家族が増えていました。

 モフモフの小さな猫ちゃんたちが、毛布の上で一生懸命お乳を飲んでいます。


「か、可愛い」


 ラウラちゃんは、真っ白な猫ちゃんですが、5匹のチビ猫ちゃんたちは毛並みが白、黒、白黒と様々です。


「これから、みんなで名前を考えるの!」


 嬉しそうなルルナちゃんと、それに同意するようにこくこくと頷く子供達。その動作が揃っていて、お人形さんみたいです。


「ルルナちゃん。チビ猫ちゃんがもう少し大きくなったら、一匹引き取ってもいいですか?」

「え? お姉ちゃんが飼ってくれるの?」

「はい。ルルナちゃんがよければですが」


 このことは、既に義両親とクラウス様に了承を得ています。


「本当!? 全員の面倒は見られないから、院長先生が飼い主を探してくれているの。

 それがお姉ちゃんなら、私も嬉しい!」

「任せてください」


 満面の笑みを浮かべているルルナちゃんの頭をなでなでします。素直で可愛い子ですね。

 これで、可愛い猫ちゃんとめくるめく夢の生活が送れます。今すぐお母さんと離れ離れにするのは、環境的によくないです。もう少し成長してからですが、楽しみができました。


 すっかりお腹がいっぱいになったチビ猫ちゃんたちは、コロコロとお互いの背中に顎を乗せつつ、眠り始めました。

 一箇所に固まるモフモフたちに、身悶えます。


 なかなかチビ猫ちゃんたちの名前が決まりません。

 みんなお気に入りの子には、自分が決めた名前をつけたいようです。

 話し合いの末、考えに考えた名前に、子供たちが満足した頃、もう空は茜色にそまっていました。


 そろそろ私も帰らなければなりません。離れ難いですが、子供たちと猫ちゃんたちに別れを告げ、馬車に向かいました。


「猫ちゃんたち、可愛かった」


 顔を綻ばせながら、馬車の中で思いを馳せていると、モニカが温かい眼差しを向けてきます。


「レティシア様は、猫が好きなんですね」

「猫ちゃんだけじゃなく、動物全般好きよ。モニカは?」

「私ですか?……そうですね、可愛いと思います」


 ほんのり口元が緩んでいるモニカは、案外可愛いもの好きなようです。わかります、その気持ち。見ているだけで癒される子たちです。


 チビ猫ちゃんをお迎えするために、色々と用意しなければならないなと考えていると、突然、ドンっと大きな振動がありました。


「うぎゃっ!」

「レティシア様!!」


 大きな揺れで、身体が浮きそうになりしたが、モニカが庇うように支えてくれます。私も必死で彼女にしがみつきました。


「な、なに!?」

「馬車が猛スピードで走っているようです」


 馬車の揺れが激しくて、何が起こっているのかわかりません。外には、御者とは別にバルが馬に乗って先導していたはずです。

 馬が暴走しているとすれば、このまま馬車が横転してしまうかもという恐怖で手が震えます。


 立ち上がることもできないまま、15分ほど走り続けていたでしょうか。もしかしたらもっと短かったかもしれません。徐々に馬車のスピードが遅くなり、やっと止まりました。


「大丈夫ですか、レティシア様」

「ええ。モニカは?」

「問題ありません」


 先ほどまでの喧騒(けんそう)とは打って変わって、今は怖いくらい静かです。


「外の様子を見てきます。レティシア様は、ここで待っていてください」

「待って、私も行くわ!」


 拳を握りしめ、気合いを入れると、私は椅子のカバーを外します。


「それは……」

「いざという時の為に、弓矢を入れておいたの」


 馬車の椅子の下は、空洞になっていたので、ちょうどよかったです。以前の湖襲撃事件以降、私だって、危機管理くらいはしているのです。


「さすが、レティシア様」

「何が起こるかわかりません。警戒していきましょう」


 馬車が停止したということは、馬の暴走などではなく、意図的な可能性があります。


 久し振りに、私はとても怒っています。

 だって、すごい速さで走っている馬車の中がどれほど怖いものか、もし何者かの仕業なら、絶対に許せません!!

 弓矢を手にした私は、馬車の扉を開けました。

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