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39.穏やかな日々の終わり?

 2杯目を阻止し続けているレティシアです。頑張っています。最近は、眠らなくなったクラウス様とたくさん話をするようになりました。


 内容は、家族のことが多いです。

 両親や兄姉様たちのことを興味深そうに聞いてくれます。

 お実母様の教えを話すと、驚いたり、心配そうにしていますが、だからシアはそうなんだなと妙に納得した顔をされます。

 お実母様の教育方針は、一般的では無いのですかね?


 逆にクラウス様もご両親の話をしてくれました。


 お義母様は、もともと侯爵家の末娘だそうです。昔は剣を振り回していたほど、やんちゃなお嬢様だったらしいです。今の様子からは想像できませんね。


 かなり強いのだそうですが、それを上回るのがお義父様。のほほんとしているように見えて、クラウス様でも未だに勝負して勝てるかは、五分五分だとのこと。


 そんなお義父様の強さに惚れたお義母様が、とにかく押して押しまくったそうです。父親、つまりクラウス様のお祖父様に頼み、婚約者になったという経緯がある強者です。


 身分も合い、どちらの家にも利がある婚姻は、特に問題なく成立したわけですね。


 今も夫婦仲が良好な理想的な2人です。


 こんな風に穏やかな時間をクラウス様と過ごすうちに、考えるようになりました。

 これからも、こうやって、のんびりと暮らしていくのかと、なんとなく未来が想像できてきました。

 悪くないと思います。


 少し心配していたクラウス様とバルの関係も、最近では普通に話している場面も見られます。特に剣術については、お互い話が合うようで、手合わせも何度かしているよう。


「クラウス様、いってらっしゃいませ」

「ああ、シア。いってくる」


 いつものように、仕事に向かうクラウス様をお見送りしています。今日は、今にも雨が降りそうなほど、空を雲が覆っています。

 家でゆっくり本を読んで過ごそうと思います。


 突然、玄関ホールが慌ただしい雰囲気に変わりました。

 扉がバタンと開き、使用人の1人が転がるように中に入ってきます。


「く、クラウス様、大変です!」


 慌てた様子の使用人の後ろから、帯刀した真っ白な軍服の軍人さんらしき数人が、ものものしい様子で中に入ってきました。

 一体何ごとかと思っていると、その間から1人の女性がしずしずと前に出てきます。

 人形のように愛らしい顔立ち、丸くてクッキリとした大きな瞳は、涙も流していないのに潤んでいます。


「クラウス、お久しぶりね」


 彼女は、ニッコリと微笑みを浮かべています。ぞっとするほどの神々しさに、畏敬(いけい)の念すら覚えます。


「アンジェリカ様……?」


 動揺を隠しきれないといったクラウス様の声。

 プラチナブロンドのフワフワした柔らかそうな髪が揺れ、綺麗なエメラルドグリーンの瞳、庇護欲を唆るような小柄で細っそりとした女性。

 上品で美しい淡い紫色のドレスを着た妖精さんです。

 クラウス様が話していた人物と一致しますね。


 彼女が元婚約者のアンジェリカ王女殿下?

 なぜここにいるのか疑問ですが……とても、いいことには思えません。


 なにやら、面倒臭そうな大きな問題がやってきた気がします。


 ポツポツと降り始めた雨は、やがて激しくなり、大きな雷の音が鳴り響きました。

 まあ、なんてステキな偶然。雰囲気が出ますね。

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