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31.幽霊コワイ

 調査から戻ってきたクラウス様と屋敷に帰ってきたのは、太陽が山に隠れて、夜空に星が輝いている時間でした。


 ヤーナさんからは、遅くなるかもしれないから、屋敷まで護衛をつけて送ると言われましたが、クラウス様が戻るまで待ちましたよ。なんだか気になってしまったんですよね。


 屋敷の方に連絡がいっていたようで、お義父様とお義母様には、無事でよかったと、とても心配されて、逆に申し訳ないくらいです。


 今後、外出するときは、護衛をつけようと提案したお義父様。

 気軽に外に出られなくなるのは嫌ですが、仕方がありません。

 私が狙われたわけじゃないので、護衛ならクラウス様につけた方が……とは言えませんでした。

 ご厚意で言ってくださっていますからね。


 軽めの夕食をとった後、クラウス様が部屋にやってきました。

 いつものようにお酒を勧めると、チビチビと飲みながら、今日の事件のことを話してくれます。


「まだ調査中だが、南の方で略奪を繰り返していた盗賊団の残党ではないかというのが、皆の見解だ」


 やはり、ヤーナさんの推測が正しかったようです。


「盗賊団を捕縛したのは、レティシアがこちらにくる前の話だ。残党を懸念していなかったのは、私の落ち度だ。

 危険な目に遭わせて、すまなかった」


 頭を下げたクラウス様の後頭部が見えますが、それはおかしいです。


「悪いのは、今回襲ってきた人たちです。クラウス様はなにも悪くありません。だから、謝らないでください」

「……それでも、今日は護衛をつけて湖に行くべきだった」


 ピクニックに護衛を引き連れて行くのは、情緒がない気もしますが、上級貴族ともなれば、それが普通なんでしょうか。

 もちろん、いてくれた方が安心ですが。

 王家の方々には、常に護衛が付いていると聞いたことがあります。私なら息が詰まりそうです。


「それと、一つ気になることがある。レティシアを助けたあの短剣だ」


 そ、それは、ヤーナさんの秘密が明らかになってしまいます。私は、墓場まで持っていくので話しませんよ!


「珍しい形状の短剣だったんだ。わが国で、主流の短剣といえば、刃が真っ直ぐなんだが、あれは三日月のように曲がっていた。あまり見たことがない。

 一体何者なのか、さっぱりわからない」


 三日月のように曲がっている短剣。

 ヤーナさんが使っていた短剣は、刃が真っ直ぐだった記憶があります。では、彼女じゃないと?


「他国の人間の可能性もある」

「……他国の見知らぬ人が助けてくれたというのですか?そんなまさか」


 たまたま通りがかった他国の人が……あ、襲われてる。助けなきゃ! と短剣を投げるなんて、現実的にありえません。

 他国の知り合いにも心当たりがないですし。


「その通りだが、この短剣以外の痕跡が見つからなかったんだ。まるで、幽霊のように透明な存在……」


 ひいぃー。やめてください。怖いです。幽霊はダメ、絶対。

 それだけは、ご勘弁を!!

 思わず耳を手で塞ぎます。


「……レティシア、幽霊が怖いのか?」


 なにかを察したのか、クラウス様が聞いてきます。ちょっと口元がにやけています。


「物理的にどうにもできないものは、嫌です!」


 そう答えるとクラウス様は、クスクスと笑いだしました。

 なんなんです! 怖がっている人を面白がるとは、酷い男です。


「いや、すまない。レティシアは、怖いもの知らずだと思っていたから、意外だったんだ」


 クラウス様を睨み付けると、彼は慌てたように言い訳をしました。言い訳にもなってませんけどね。

 ありますよ、怖いものくらい。か弱くて可愛い女性なんですから!!

 気まずい様子で、頭を掻くクラウス様。


「とにかく、調査は続けてみるから……」


 ち、調査を続けるんですか!?

 恐ろしい存在をつまびらかにしようとすれば、呪われるやもしれません。どなたか存じませんが、私には絶対に取り憑かないでください!!

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