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26.ちゃんとしてください

 数日経っても、お出掛けに誘われません。

 とうとう痺れを切らして、私が話をふることにしました。


「きれいな湖があると聞いたのですが、ご存知ですか?」


 2人の時に話を切り出すと、連れて行けと強要しているみたいなので、朝食時にサラリと言葉にします。


「それは、ボニファース湖のことね。森の中にある大きな湖よ」


 ジャガイモのスープを飲んでいたお義母様が答えてくれました。

 ジャガイモのスープ、おいしいんですよね。トロリとなめらかな口当たりに、ジャガイモと玉ねぎの甘みが合わさって、大好きなスープの一つです。


「砦の近くにあるんだよ。暑い日には、子供たちが水浴びに行ったりしている、魚も釣れるしね」


 朝食のほとんどを食べ終わっていたお義父様がそう教えてくれました。

 いいですね、水浴び。男爵領に湖はありませんが、代わりに大きな川があります。昔は、家族で泳ぎに行ったりしました。

 流れの速いところに連れて行かれて、突き落とされます。流れに逆らってどれだけ耐えられるか、お実母様に時間を測られます。

 なかなか、ハラハラドキドキな体験でした。

 なにが起きても動じない強い心臓を手に入れました。


 クラウス様の目があっちへ行きこっちへ行きしていますが、私からは誘いませんよ。


「ねえ、クラウス。今度の休みに連れて行ってあげたら?」


 お義母様、ナイスアシストです。


「そうだな。……レティシア、どうだろうか?」


 誘い文句としてはゼロ点ですが、クラウス様にその辺の小粋さを求めるのは、間違っているとわかっています。


「はい。きれいな湖を見てみたいので、嬉しいです」

「そうか」


 表情を崩して喜んでいるようですが、クラウス様は何もしていませんからね。満足気に胸を張っている場合じゃありませんよ。



 お出かけすることが決まると、お義母様が自室にやって来ました。お出掛けに着ていくドレスを選ぶ手伝をしてくれるそうです。


「はあ、娘っていいわねぇ。ああ、これも似合うわね」


 順々にドレスをあてていくお義母様のなすがままです。息子と嫁の初デートがそんなに楽しみなんでしょうか。


「レティシアちゃん、クラウスと仲良くしてくれて、ありがとうね」

「え?」


 ああ……かなりの頻度で、夜、同じ部屋で過ごしていたら、傍目には仲良くしているように見えますよね。

 仲は悪くないですよ。


「あの子って奥手でしょう。ほら、子供の時から婚約者がいたから、あまり女性と交流を持たないようにしていたのよ。

 だから、女の子が喜びそうな話題もふれないし、気のきいたことも言えないのよね。

 レティシアちゃんから積極的にしてくれると嬉しいわ」


 王女様との付き合いは、偏ってましたからね。わがままを聞いて、それを叶えるだけでは……口説いてるとは言えませんよね。


 それにしても、私たちの間に何かが芽生える構図が思い浮かびません。

 残念ながら、私も恋愛のあれこれがよくわからないのです。

 初恋は失恋で終わりましたし。

 積極的とは、どういうものなのでしょうか?


「よし、このドレスがいいわね!!」


 決定したようです。私の希望は一切含まれませんでしたが、お義母様、センスがいいです。

 さすが、女神様です。

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