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25.歩み寄り

「レティシア……」


 目が充血しているクラウス様のグラスは、2杯目もなくなりかけているので、そろそろ限界のようです。


「君に、謝らなければならない」

「私にですか?」


 首を傾げていると、クラウス様は深く頭を下げました。


「最初、君にひどい発言と冷たい態度をとったこと、申し訳なかった」


 前に気にしていないとお伝えしたはずですが、クラウス様は気に病んでいたんですね。真面目です。


「怒っていませんが、謝罪を受け入れます」


 気にしていないという言葉は、適切ではありません。

 その発言でヤーナさんを怒らせてしまって驚いたので、私はそうお答えしました。

 クラウス様は顔をガバッとあげて、心底ホッとしたように目元を手のひらで押さえています。


「……君に嫌われようと思ったんだ」

「はぁ」

「愛していないなら、嫌われた方がいいと……。

 あの時、君に愛していないと言われて……当たり前のことなのに驚いた。

 それと同時に、自分がいかに自意識過剰で、愚かな発言をしたのかと後悔した……」


 後悔したから、毎日のように部屋に来て、私と関わろうとしたのでしょうか?


「……それで、だな」

「はい?」


 咳払いをしたクラウス様は、残ったお酒を飲み干します。

 焦点があっていないようですが、大丈夫ですか?


「正直……君が私のことを好きになってくれるのかも、君のことを女性として好きになれるのかも、まだわからない。

 ただ、人としては、好ましいと思っている……」


 嫌われているわけではないようですが、正直に話し過ぎです。

 酔っ払っているので、本心でしょう。

 きっと明日には、忘れているんだろうな。


「だから、これからはもっと君と過ごしたいと考えているんだ……。一緒に出かけたり、誘いたいのだが……断られたらと思うと、二の足を踏んでいる……」


 そんなことを考えていたのですか。

 全く、デートしたいならしたいと言えばいいのに、意気地なしですね。


「きれいな湖があるんだ……君と……」


 終わりのようです。フラフラっとクラウス様は、そのままソファーに倒れました。


「そういうのは、ちゃんと素面の時に言ってもらわないと困ります。でも……きれいな湖には興味ありますね」


 結婚してから2人で出掛けたことはありません。

 充実した日々を送っていたので、気にしていませんでした。


 今の話はとどのつまり、好きになる努力したいということですよね?私も同じように好きになる努力をしなければならないのでしょうか……?


 クラウス様のこと、嫌いではないですが、男性として好きかと聞かれると首をひねります。

 散々、王女様への愛を語っている様を見せられましたからね。

 ですが、これから長い人生夫婦として過ごすわけです。関係を悪化させることは、望んでいません。


 お互いの歩み寄り、夫婦としては大切なことです。


 王女殿下のことを完全に吹っ切れているのなら……少しは歩み寄ってもいいかもですね。

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