21.大好きなお姉ちゃん
ルルナちゃんが泣きやんだので、彼女が暮らしている孤児院へ送って行くことにしました。
ラウラちゃんを見つけた教会裏の空き地から、さほど離れていないポールソン孤児院というところに、住んでいるそうです。
ドワイアン辺境伯家が支援していて、お義母様もよく訪れているとモニカに教えてもらいました。
「お姉ちゃんは、クラウス様のお嫁さんなの?」
「そうですよ」
辺境伯家の話が出てきたため、ルルナちゃんに私の正体がバレました。いえ、バレてもいいんですけどね。
「ルルナは、昔領主様とクラウス様に助けてもらったんだよ」
「……そうなのですか?」
ルルナちゃんはコクリとうなずきます。
「ルルナが赤ちゃんの時のことだから覚えてないけど、お姉ちゃんから聞いたの。
私のお父さんとお母さんは、魔物に襲われて死んじゃったんだって。ルルナたちも危なかったけど、領主様たちに助けてもらったんだよ」
「お姉ちゃんがいるのですか?」
「うん。領主様たちは命の恩人だから、恩返ししないといけないって、お姉ちゃんはいつも言ってるの」
「そうでしたか」
生き残った姉妹二人、苦労もあったことでしょう。ルルナちゃんはとても優しくていい子なので、お姉さんは立派に面倒を見ているのですね。
「クラウス様のお嫁さんなら、お姉ちゃんはお姫様?」
おっと、ルルナちゃん。それは禁句ですよ。
「ごめんなさい。それは違います。私は……ドワイアン辺境伯家の若奥様です」
「ふうん、そっか」
特に疑問を持たせずに済んだようです。どこかでクラウス様の婚約者がお姫様だと聞いたのですね。
無邪気な子供の発言は、時に残酷なのです。
「ルルナ!!」
前方から声が聞こえたかと思うと、女性が一人走ってきました。
おや、見覚えのある人ですね。
「ヤーナお姉ちゃん!!」
まさかのヤーナさん。ルルナちゃんのお姉さんは彼女でしたか。
ルルナちゃんも彼女に向かって走りより、二人は抱き合います。
姉妹の感動の再会です。
「どこに行ってたの! 院長先生からルルナがいなくなったって聞いて、心配してたのよ!」
「ごめんなさい、お姉ちゃん。ラウラがいなくなっちゃって、捜してたの……」
ルルナちゃんは、拙いながらもヤーナさんに説明をしています。
私の方に指をさしたルルナちゃんの行動に、ヤーナさんも私とモニカの存在に気がついたようです。
「……レティシア様、妹がお世話になったようで、ありがとうございます」
「こちらこそ、すみません。ルルナちゃんが無事だと先に連絡をしておくべきでした」
孤児院の人たちが、ルルナちゃんを捜しているかもという可能性を失念していました。失態です。
「ルルナ、院長先生にただいまって言って来なさい」
「わかった! レティシアお姉ちゃん、ありがとう! またね!!」
ルルナちゃんが手を振ってくれたので、私も振り返します。彼女はそのまま孤児院の門をくぐって行きました。
ポールソン孤児院は、煉瓦造りの立派な建物です。ルルナちゃんも明るい笑顔を見せていたので、ここはきちんと管理されているのでしょう。
中には、ひどい所もあると聞きますから、よかったです。
「レティシア様、少しお話よろしいですか?」
ヤーナさんが真剣な眼差しを向けてきます。真面目な話ですかね?私、そういうの苦手なんですけど……。
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