17.成功ですか?
パチパチパチと手を叩いてくれたのは、救世主、お義父様です!
「いやいや、すばらしい演説だったよ。弓の腕前も文句なしだ。さすが、私が見込んだだけのことはある」
「ありがとうございます」
得意げな表情にならない程度に、微笑みます。やり過ぎると調子に乗っていると思われますからね。
お義父様に続き、皆さんからも拍手をいただけました。
「弓を扱えるのか……?」
褒められて喜んでいると、クラウス様が驚いたように聞いてきます。
「はい。実家の男爵領にはドワイアン辺境伯領のように軍などありません。ですから、盗賊や魔物から身を守る術を教えられます。弓は得意です」
普段は農作物を育ててのんびりしている男爵領ですが、自警団があり、男女関係なく戦える者は参加しています。
魔物というのは、悪魔に魅入られたものの総称です。
普通の動物が凶暴化するという現象が、たまに起こるんです。
本当に悪魔がいるのかわかりませんが、そう言い伝えられているのです。
魔物は普通の個体よりも身体が大きくなり、力も強くなります。特徴は、目が赤くなること。
襲われたら大変なので、発見次第討伐します。
男爵領は、田舎なので国軍に助けを要請してもなかなか来てもらえません。ですから、自分たちで身を守るために、戦えるようになったのです。
小さい頃から、両親に鍛えられて、兄弟姉妹たちとともに修行をしました。すごく厳しくて、何度も泣きましたが、そのおかげで自分に自信がもてるようになりました。
「レティシア様、すごいですね」
ハミルトン様は、的に刺さった矢を見ています。
借りた弓を返すと、軍人さんは目をキラキラさせて見てきます。
なんでしょう、尊敬してくれてるんですか?
ですが、私が求めている視線はそれじゃありません!
清楚な若奥様として視線を釘付けするつもりが、ただの弓使いとして注目されている気がします。おかしい。
「君には驚かされるな」
クラウス様がしみじみといった様子で呟きます。私もよくクラウス様に驚かされていますよ。お互い様ですね。
騒がしい中、ヤーナさんの姿をさがしましたが、いつの間にか、いなくなっています。
彼女のような忌憚のない意見を聞かせてくれる人は貴重なのですが、どこに行ってしまったのでしょうか?
その後、クラウス様に皆さんを紹介してもらったり、挨拶をしましたが……正直、全員覚えるなんて無理です。どれだけいるんですか? 次から次へと、増えていきます。
ドワイアン辺境伯軍は、男性が大半を占めていますが、女性も多いです。女性軍人さんはかっこいいので、仲良くなりたいですね。
訓練とか参加させてもらえたりするのでしょうか?
さすがに無理ですかね?残念です。