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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第九章 『月の裏側』
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2. 〝今そこにある危機〟

「今そこにある危機」(フィリップ・ノイス監督 1994年のアメリカ映画)から

「警察?早すぎない?」

 萌が呟く。車はそのまま校舎の死角に消えた。

「微笑、大丈夫なの?てか、事件続きだけど、あんた何か変なもの連れて来たんじゃない?」

「あ、あはは」

「でも、安全第一だよ。危険なことは絶対にしちゃだめ。事件は警察に任せればいいから」

「ネストのみんな!あなたたちも避難して!」

 一陽が駆け寄る。八島が問う。

「教頭先生は大丈夫ですか?」

「とりあえず先生方が校舎内にお連れしてます。あなたたちはそれより自分の心配をして。そうね、あなたたちはなるべく校舎伝いにネストに向かって、そこで待機していて」

 一陽が深夜たちを校舎の陰に誘導する。小走りの萌が校舎から出てきた二人を振り返る。

「あれ、県警の田村じゃん。もう一人は見たことないけど」

「巴警部補。先日の銀行の時のもう一人の担当」

「やっぱ、警察の人とも知り合いなんですね?」

 微笑が少し頬を染める。萌が鼻で笑い、微笑に耳打ちする。

「一方的に知ってるだけだよ。向こうが知ってるのはあたしたちじゃないから」

「田村さんには、私は何度かお世話になってるけど」

「こちらです!」

 怪訝な表情で萌を見ながら一陽が手を振る。田村と巴が駆け寄る。

「校長の雨月です」

「県警の田村です」

「巴です。怪我人は?」

「教頭の安宅です。念のため保健室に搬送しました。すみません、現場の維持は難しくて」

「それは仕方ないでしょう。あ、そのコートはどうされました?」

 田村が一陽の左の腰のあたりを指さした。ポケットの下が破れている。

「あ、た、多分、演台から飛び降りるときに引っ掛けたんだと思います」

「そうですか」と田村が答え、八島達を見る。

「ええと、君たちは?」

「僕らは新聞編集営業配達部なんですけれど、今回の事件についてお聞きしたいと思って」

「ああ、そう。まあ、今来たばかりで何にもわからないんだけど」

「すみません。捜査の妨げになるので後にして下さい。というより避難して下さい」

 巴が割って入る。萌が舌打ちをするが、八島が「すみませんでした」と下がる。

「でも、本当に早かったですね。通報してからまだ数分しか経っていないのに」

「ええ、別件でこちらに向かっている時に連絡が入りまして」

「別件?」

「ええ。あの、赤帽の、も、ぷっ、失礼しました、も、モエモエ急便の野宮伝さんと言う方にお聞きしたいことが。今日こちらに仕事でいらっしゃってると伺ったのですが」

「野宮君に?」

「ちょっ?あんた何人の屋号言うのに笑ってるわけ!」

「萌ちゃん!」

「大体警察が赤帽に何の用があるっての?田村サンだっけ?」

「田村さん?ご存じなんですか?」

「いや、多分会ったことはないと思うけど。だよね?」

 田村の質問に、萌が横を向き、深夜が何かを言いかけて口ごもる。

「あ、すみません。この人、野宮伝さんの妹なんで」

「げっ、キモオタ!又あんたは突然」

「沸点が低すぎるぞ、ノノ。肝心なことを言わないから怪しまれるんだよ。ご無沙汰しております、田村さん。二年前の事故以来ですが、覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、覚えてるよ」と田村が頷き、そして深夜を見た。

「そうか、絵馬深夜さんか。元気そうで何より」

「はい、何度もお世話になりまして、ありがとうございます」

「そ、それより!警察がお兄ちゃんに何の用だってんですか?」

「いくつかお聞きしたいことがありまして」

「だからそれを聞いてんの!あたしは妹だから知る権利があるでしょ?」

「それを判断するのは警察です」

「何?あんたらにとって、権力はあたしたちを奴隷にするための道具なわけ?」

「まあまあ、えーと、君は野宮君の妹さんの」

「萌ですケド」

「あのー、『モエモエ急便』の由来は、萌先輩が小さいころ自分のことを『モエモエ』と言っていたからだそうですよ」

「微笑!余計なこと言うな!」

「野宮萌さん。君のお兄さんは以前そちらの絵馬さんの救助で活躍した。つい最近も劇場型詐欺を阻止している。とても立派な人物だ」

「そんなのお兄ちゃんなら当たり前だし」

「だが、先日の信州銀行浅麓支店強盗事件の犯人グループと野宮君の接触があった、という匿名の情報が寄せられた」

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