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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第八章 『マックスウェルの悪魔』
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3. 〝ある歌姫の想い出〟-2

「雨月さんが校長に就任する前、雨月は建て替えと増築工事をしてた。俺はあの日、建築資材の横持ちをやってたんだけど、仕事が終わって、裏に停めた車で帰る準備をしてたら、取り壊し予定の旧校舎ですごい音がした。現場の騒音とは明らかに違うけど、周囲には誰もいない。音のした方を見ると、当時の、雨月さんや俺がいた時のネストの部室の窓から煙が出てる。とにかく何も考えずに走っていったら、部室から炎が上がり、その前の廊下に生徒が二人倒れていた。仰向けになったシンちゃんと、シンちゃんを庇うように覆いかぶさったマー君だった」

 突き当りを左折し、駅に向かう。ハンドルを切りながらバックミラーを見ると、花壇の前にしゃがみこみ、手を合わせる少女が映った。

『真昼!』

 後方から怒鳴り声が聞こえる。伝と真昼が振り返ると、深夜が眉間にしわを寄せていた。

『何だよ深夜、何怒ったような顔してんだよ』

『怒ったような顔じゃなくて怒ってるの!いい加減にしなさいよ。伝さん困ってるじゃない』

『うるせーな。いいじゃん別に』

『伝さん、いつも真昼がすみません。今日は仕事ですか?』

『うん、新校舎の資材の搬入と作業補助。これからしばらくは雨月に来ることが多くなるよ』

『やったー!俺、毎日愛妻弁当作っちゃおうかな』

『何言ってるの、卵焼きもろくに作れないくせに』

『うるせーなー。愛情さえこもってればなんでも美味しくなるさ。ね、デンさん』

『そうだね、マー君の言う通りだね』

『もう、伝さんも、あんまり真昼を甘やかさないで下さい』

『そうそう、この間シンちゃんが作ってくれたおはぎ、すごく美味しかったよ。ごちそうさま』

『HELIXでもお礼言われましたよ。それに、私も真昼も、感謝してもしきれないくらい、伝さんにはお世話になっていますから』

『俺たちきょうだいこそマー君やシンちゃん達のおかげで楽しい毎日を過ごせてるよ』

『さすがデンさん、わかってるね?やっぱり俺たちは魂の部分でつながってんだね』

『真昼!もう、すみません伝さん。真昼ったら伝さんを本当のお兄さんみたいに思って甘えて』

『そう思ってくれるのは嬉しいよ。もちろん、シンちゃんも』

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