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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第八章 『マックスウェルの悪魔』
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1. 〝ドリームガールズ〟

「ドリームガールズ」(ビル・コンドン監督 2006年のアメリカ映画)から

 フリルのついた衣装をまとった三人のアイドルが、ステージ上で歌い、踊る。

 楽曲の終わりに合わせてポーズをとり、数秒静止した後、三人は中央に戻りお辞儀をした。

『皆さん、こんにちは!』

 マイクを口もとに持った三人が同時に叫ぶ。だみ声の返事がおさまると、中央のショートカットが言った。

『今日は〝アサマドリームガールズ〟のステージにお越しくださいまして、どうもありがとうございます!』

 再度歓声。

『あらためてメンバーの紹介をさせていただきます。まず、こっちのセミロングがモユです』

『みんなーっ! 元気ーっ!?』

 大きな歓声が沸き起こる。

『そしてこっちのボブがシンヤ。男みたいな名前ですけど、一応女の子です』

 シンヤがセンターを睨んでから、『こんにちは』と頭を下げる。同様に控えめな歓声が上がる。

『何が一応女の子だ!』

 モユがショートカットに突っかかる。

『あんたこそ』

『そしてあたしが』

 それを遮ってショートカットが叫ぶ。

『〝アサマドリームガールズ〟のセンター、マヒルです!』

 今までで一番大きな歓声が沸き上がる。

『えーと』

『だからちょっと待て』

 モユが声をかける。マヒルが笑顔で振り返る。

『なあに、モユちゃん?』

『何がモユちゃんだよ。つーか、何があたしだよ』

『も、もゆちゃ』

 真顔のシンヤがマイクを離す前の声が入る。

『そもそも、何が〝アサマドリームガールズ〟だよ。あんた、男じゃん!』

 歓声がどよめきに変わる。

『なーんだ、そんな些細なこと』

『些細じゃねーよ! 何であんたがガールズで、しかもセンターやってんだよ! どう考えてもセンターにふさわしいのはあたしだろーが!』

『でも、俺、じゃなくてあたしが一番かわいいし』

 マヒルが小首を傾げ、観客席に向く。

『ねー、みんな?』

 太い声の歓声がどよめきをかき消す。

『ほら?モユちゃん?』

『ざけんな! ちょっとみんな、あたしの方がセンターにふさわしいと思う人!』

 歓声が響く。高い声の割合が大きい。

『ほらみろ!』

『萌のは、じゃなくて、モユちゃんのは、〝アサマドリームガールズ〟じゃなくて、読モのファン層じゃん。やっぱアイドルは歌えなきゃ。ねーっ』

 だみ声の歓声と黄色いブーイングが混じる。

『それ以前にアイドル、つーかガールズなんだから男は出て行けと思う人!』

 黄色い歓声とだみ声のブーイング。

『今時そんは差別は許されないし。な?そうだろ、じゃなくてそうだよね? シンヤ』

『ざけんな。ここは女同士の熱い友情を取るだろ? シンヤ』

『え、あ、あの』

 シンヤが二人を交互に見て、それからマイクを構えた。

『と、とにかく聴いてください! 私たちのオリジナル曲、〝あさまでドリーミン〟です!』

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