1. 〝スノーピアサー〟
「スノーピアサー」(ポン・ジュノ監督 2013年の韓国、アメリカ、フランスの映画)
雪化粧の谷間を渡す高架橋。ガードレールを突き破り、観光バスの車体の半分くらいが飛び出ている。レスキュー隊員が数名、後部の窓ガラスを割り、そこから園児たちを救助している。白く染まった道路では、すでに救出された数名の罹災者達が、バスの左側面で蠢く二体のウルヴズを震えながら見守っている。一体はガードレールの際で空回りする後輪とトンネルを交互に見やり、もう一体は三本のロープを携え、側面を這って乗降口へと向かっていた。
[ドライバーは?]
車内に入ったガウスに、インカムを通じてオームが問いかけた。
[意識はありませんが、呼吸はしています。今シートベルトを外しました]
[そうか。とにかく急いで。少し何かあればバランスが崩れてバスごと落下する]
[後二分持たせてください。他の乗客は?]
[見える限りは全員救助されたようだよ]
[良かった。今、ドライバーさんに安全帯を付けました。ガイドロープは運転席の手すりにかけています]
[オーケー]
オームが振り向き、ガウスを見守りながらロープに手をかけた隊員二人に向かって手を回す。隊員達がロープを引くと、ガイドロープに腰からぶら下がったドライバーが、少しずつ欄干に引き寄せられた。一人が身を乗り出して体に手をかけ、欄干の内側に引き込む。
[良かった]
ため息を大きくついたガウスの視線の先に、トンネルの火災を抑えているKとファーレンハイトが見えた。
「おい!君も早く戻れ!」
隊員の怒鳴り声が聞こえる。頷き、戻ろうと足元を確認すると、黄色い非常灯をつけながら林道を上って来る赤帽車が見えた。
『スノーボール・アース』(ガブリエル・ウォーカー)
「全地球凍結説」に関する物語風のノンフィクションです。
『全地球凍結』(川上紳一 『スノーボール・アース』日本語訳の監修者)の方が図もあって親切なように思います。