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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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23. 〝月の病〟-2

「ウルヴズは、テイア、そしてD―NAの成功の影に隠れた鬼子です。存在が表に出れば、これに関わった全てが否定されるおそれがある。今や国民の目であり耳でもある、その意味では『日本を支配している』とさえ言えるHELIXにまで影響が及ぶかもしれません。ジーンの創設者道成寺九重彦氏の姉でもある道成寺文科大臣の絶大な人気にも大きな陰りが出る。当時の政府にとっても、ガラスの天井を米国に先駆けて壊そうとしている日本にとっても非常に都合が悪い。かといって歴史から抹消するのは良心が咎めたのか。葛藤の末、いわゆるアハト刑に辿り着いたんでしょう。アハト刑についてはご存知ですよね?」

「前に雨月さんの本で読んだよ。で、俺の車を人質に取ってどこに向かってるの?」

「人間狼同様、ウルヴズも、ウルヴズである時は人間ではないとみなされる。その代わり、毛皮を脱いだら、村の中で暮らすことを許される」

「まだるっこしいね。そこまで人権を無視する力があれば、もっと別の方法を考えそうだけど」

「それについては疑問が残りますが、一部のウルヴズは、D―NA関係者の親族だったという見方もあります。また、法や利権でがんじがらめにすることで、特定の勢力からの干渉を防ごうとしたのかもしれません」

「マスコミが動きそうだけど。というか、俺の質問は無視?」

「野宮さんがおっしゃるように、ウルヴズは大きな人権問題を孕みます。薬害と言いつつ、ウルヴズ自体には健康上の新たな問題は発生していません。冥王症の後遺症を補うような形での、しかし中途半端な特殊能力を保持し、それ故一定の義務と制限を課せられている。でも、考え方によってはそれさえ不当です。オルヴズの最終感染対象はあくまで非生命。故に、ウルヴズはキャリアではなくベクターとみなされます。でも、人に感染しないウイルスを抱えているだけなのに、人間狼として扱われることに正当性はありません」

「まあ、俺はそう責められても仕方ないけどね」

「あ、いいえ、野宮さんを責めるつもりはありません。ただ、俺が言いたいのは、マスコミが最も神経を使うのは人権問題で、ウルヴズはその中心にある、ってことです。知る権利を行使することは、新たなベクターを創り出す可能性と背中合わせです。ジャーナリスト個人はともかく、マスコミと言う社会的責任のある企業ならば、視聴者、読者への影響を考えないわけにはいきません。ウルヴズの利用が目立ち始めてからまだ数年ですから、現状は経過を見守っている状態です」

「随分詳しいね」

「〝月〟ですから。オルフェウスによって弾き飛ばされ、ウルヴズにさえなれなかった存在。ウルヴズでさえ毛皮を脱げば村の中で暮らせるのに、様々な思惑故、村どころか地球から追放され、ただ、ウルヴズたちを見つめるだけの存在。とっくにお気づきですよね?俺たちのリーダーは、表と裏の月の創設者、箙司馬さんです」

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