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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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20. 〝疎外、異化〟ー2

 無言のままの伝に、声が言う。

「襲ったわけではありません。彼は、絵馬さんにあることを確認したかったんです」

「あることって?」

「それは」

「いや、それはどうでもいい!」

 言いかけた声を伝が遮る。

「例えあの青年にシンちゃんを襲う意図がなかったとしても、何かを訊きたかっただけにしても、リハビリ中で体の不自由なシンちゃんに怖い思いをさせたことに変わりはないよ。例えどんな事情があるにせよ、俺は許せないよ」

 声はしばらく無言になり、ふと呟いた。

「司馬さんの言う通りです」

「何のこと?」

「あ、いえ」

 少し慌てた声が聴こえる。

「話を戻します。道成寺圓博士の人格はともかく、現在のGNグループの繁栄の土台がテイアだということは間違いありません。しかし、テイアが完成する直前に作られた最終段階の治験薬オルフェウスは闇に葬り去られました」

 声は続ける。戻ってきた視界を確認しながら、伝が幌の隙間から外の様子を伺う。

「オルフェウスが投与された対象のほとんどは、当時、児童養護施設に保護されていた乳幼児たちです。医療環境などの問題で後回しにされかねない彼らへの人道的配慮、という説明で施設長たちを説得したようですが、いかなる理念があろうと、しょせんそれは、ていのいい人体実験です。投与されたオルフェウスは暴走し、変異を重ね、もはや人知の届かないところとなってしまった。対ウイルスのはずだったオルフェウスは、対非生命、物質限定のウイルス、オルヴズへと異化しました」

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