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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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18. 〝君死にたまふことなかれ〟-3

「思い出したよ。俺は、彼にあったことがある」

「箙司馬に?」

「ああ。正確には見かけた、というべきか?二年前、御代田のしゃくなげ公園で、リハビリ中の少女が暴行されかけているという通報があった。近くにいた俺が駆け付けたところ、車いすと傍らにうずくまる少女、既に倒れた犯人、そして彼らを見下ろし、立ち尽くす男がいた。男は俺の方を見ると走り去った。それが彼だ。後の少女の証言で、倒れていたのが暴漢だと分かった。ただ、無我夢中で抵抗していたら突然その男を引きはがしてくれた人がいた、という。必死だったから助けてくれた人の顔は見ていない、とのことだった。暴漢は帰省中の東大の文学部の学生だったらしい。巴がいた頃と同じ時期じゃないか?」

「東大と言っても毎年二千人位入学し、卒業していきますから。文一だけでも約四百人。クラスかサークルが同じでない限り、ほとんどが他人、先輩も後輩もありません!」

「いや、別に嫌味じゃないが。ともかく、その大学生は、発見された段階ですでに絶命していた。結局、少女の希望もあって事件は内々に処理されたが、ある意味、今回の浅麓支店の事件に通じるものがあるね」

 巴は無言のままだ。

「大学生が何かを盗んだわけでもないようだし、被害者もそう証言した。で、その大学生が幼少期に冥王症にかかっていて、テイアを投与されていたようだ、ということまでわかったところで、捜査は打ち切りになった。報道がほとんどされなかったのも同じだ。まあ、あっちはデリケートな部分もあるから、被害者感情を考慮した結果かもしれないが、どうしたの?息が荒いよ?大丈夫?」

「あ、すみません。そんな、手足の不自由な少女を襲うなんて卑劣な行為に、怒りが。で、でも、実は箙司馬も暴漢の仲間だった、と言う可能性はないのですか?」

「どうだろうね。少なくともその少女の証言では、暴漢は一人だったようだ。それに、倒れた暴行犯を見下ろした、彼の悲しそうな目が印象に残ってるんだよね」

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