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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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17. 〝君死にたまふことなかれ〟-2

「ご存じありませんでしたか?」

「うん。まあ、でも、本人が言いたくないことは知る必要もないかな」

「そうですか。ともかく、テイアの成功の後の道成寺夫妻は、表に出ることを好みませんでした。十年ほど前、夫の卓博士が亡くなり、九重彦氏が表に出るのに反比例するように圓博士は世間から忘れられていきました。長野に戻ってくる頃には、既に癌に侵されていたようです」

「お元気そうに見えたんだけどね」

「引越して数か月後には浅麓医療センターに入院。妹さんの友達、絵馬深夜さんと同室だったのもご存知ですよね」

「ああ。シンちゃんのお見舞いに行ったときにお会いしたよ」

「入院後、ひと月経たずに死去。葬儀も含め、一線で活躍した研究者とは思えない、ひっそりとした晩年でした」

「入院していた病院の先生や看護師さんのほとんどは道成寺博士を知っていたようだ。でも、だからこそ気を遣って、情報が外に出ないようにしていたような気もする」

「医療関係者のほとんどは、口に出さないだけでテイアの功罪をわかっているでしょうしね」

「でも、いい人だったよ。こっちに来る時あれこれ話したけど、穏やかで、お客なのに運転手の俺に気を遣ってくれる優しい女性だった。それに、リハビリ中のある事件でシンちゃんが辛かった時は、自分の孫のように泣いてくれていたみたいだしね」

「ある事件とは?」

 タブレットを通した質問に、伝は少し間を置いてから答えた。

「それは言わなくてもいいよね?」

「では俺が代わりに答えましょう。絵馬深夜さんが、帰省中の大学生に襲われた事件、ですよね?」

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