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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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16. 〝君死にたまふことなかれ〟-1

「ウェルギリウスの死」(ヘルマン・ブロッホ)から

「あ」と呟いて深夜が目を伏せる。萌が「その辺の話はやめろって」と砧を睨んだ。

「どういうことですか?」

「微笑には関係ないよ」

「ないことはないだろ?オルフェウスの開発者の一人だぞ」

「そりゃそうだけど、リハビリ中の具体的なことは」

「事実は事実として知るべきだ。エマが道成寺博士を看取ったことも、リハビリ中、病院から近いからって良く行ってたしゃくなげ公園で大学生に襲われて、その大学生が死んだことも」

「キモオタ!」

「萌ちゃん、大丈夫。私が倒れて気を失ってる間に終わってたし、誰かが助けてくれたみたいだけど、結局わからずじまいだし」

「相手の目的ははっきりしないが、襲った大学生は、テイアの副作用で治療中ってことになってた」

「なってたってどういうことですか?」

「本当はおそらくオルフェウスの副作用だ。だが、国はニホンオオカミ同様、オルフェウスの存在自体を認めていない。テイアの稀な副作用とした方がまだましなんだろ?もっとも、それさえ公式な見解じゃない。で、結局事件自体も被疑者死亡で曖昧に終わった」

「そうだったんですか。深夜先輩も大変だったんですね」

「当たり前じゃん!」

 萌が怒鳴った。

「右目、右手、右足を真昼からもらって移植したんだ!二十歳までに歩けるようになれば奇跡とか言われてたのを、一年半でちょっと見ただけじゃわからないレベルまで回復したんだよ?並大抵じゃないよ」

「萌ちゃん!」

「でも、深夜」

「私には、萌ちゃんがいたから。一緒にいてくれて、いつも支えてくれた」

「でも、あたしはあの時」

「二十四時間三百六十五日一緒なんて無理。でも、萌ちゃんがいてくれる、って思うだけでも心強かった。もちろん、今も」

「深夜」

「深夜先輩、萌先輩」

「今関係ない話はおいといて」

「空気読め!」

「とにかく、〝月〟は多方面から堆積物を寄せて、情報の化石を作った。俺たちが参加したあの講演会も、冥王症の化石を作る作業の一環だったはずだ」

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