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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第六章 『ツァラトゥストラはかく語りき』
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7. 〝ウォッチメン〟-1

「ウォッチメン」(ザック・スナイダー監督 2009年の映画)から

「ニホンオオカミのことは真昼先輩からも聞いたことがあります。北欧から代理母と狩りの教師として譲り受けたオオカミがイザナミとイザナギ。そして生まれた子たちがアマテラス、ツクヨミ、スサノオだって」

 微笑が言った。砧が続ける。

「一般に知られているオオカミの話のほとんどは、その『月は見ている』に基づく」

「え?お役人さんの?研究者とかじゃなくて?」

「日本政府は、公式にはニホンオオカミの存在そのものを認めていない。いまだにあくまで百年前に絶滅した動物って扱いだ。公式な研究機関は扱えない。唯一の例外は、サンラインの北にある農業試験場の一角にある施設だ」

「実際にいるのに?」

「まあ、まだクローン動物に関する法律も整備されていないのに、よりによってオオカミだから、政府が神経質になるのもわかる。かといって、積極的に駆除しようもんなら、この間も言ったように、一度は国家的なプロジェクトとして蘇らせた野生動物をもう一度絶滅させるのか、と国際的な非難を浴びるのは必至だ。だから『功名心にかられた研究者の暴走』と言う形にして、オオカミに関しては黙殺する方針を取った。現在でも、建前上はヤマイヌ扱いだ」

「山犬ですか?嘘もセコいですね」

「嘘ってわけでもない。日本じゃ、オオカミは昔ヤマイヌって呼ばれていたらしいからな。とにかく、出自自体の曖昧さがそのまま現状になっているが、一方で浅麓地方の住民への配慮は必要だ。特に農業従事者からの猛反発があった。だから国は、『ヤマイヌなど野生動物への対策として』と言う形で、銃刀法を一部改定した。そして、監視、観察の必要性から〝月〟の成立と拡大を容認、というか、見て見ぬふりをした」

「何かいやらしいですね、やり方が」

「そもそも密猟が少ないのは、オオカミそのものより、ウイルスとしてのシルバーショットガンが怖れられているからだ。言わば、シルバーショットガンがシルバーショットガンを恐れている、ってとこだが、観察が公的じゃない理由も同じ。その意味じゃ、免疫のあるウルヴズは最適な道具のはずなのに、駆り出されるのは対密猟者のみってのはおかしいだろ」

「そのせいで深夜は危険な目にあったってのに。SS対策なんて政治家がやれっての」

「まあ、その辺は俺たちには想像もつかないことがあれこれあるんだろ?で、更には今世紀初頭の冥王症の流行、そしてテイアの成功だからな」

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