10. 〝コンタクト〟
「コンタクト」(ロバート・ゼメキス監督 1997年のアメリカ映画)から
病院に到着すると、既に数名の医師と看護師が担架を用意して待機していた。微笑が手術室へと搬送され、萌は別の処置室へと連れて行かれる。砧が伝に肩を借りて荷台を降りた。
「話は後で聞く。今は怪我人の治療を優先しよう」
病院への説明の後、田村が伝に言った。
「田村さんは?」
「俺たちはまだ一応スコラ御代田の事件の捜査中だ。現場に戻るよ」
田村が巴を促す。
「あの、怖くて訊けなかったんですが」
走り出した車内で巴が目を泳がせながら言った。
「どうして、サンラインのあの場所に野宮さんたちがいるってわかったんですか?」
「ん?ああ、もしかして俺も疑ってたの?」
「ええと、あの」
巴が言い淀み、それから「すみません」と頭を下げた。
「謝ることはないさ。ちなみに、別に野宮君を探してたわけじゃない」
田村がポケットに手をやる。
「これ、ありがとう」
「あ、それは!」
「スコラ御代田で解錠する時にガウスにつけておいて、さっき回収した。音声コピーしたら返すから、もう少し貸しといて」
ハンドルを握った巴が田村を睨み、呟く。
「前言撤回。謝罪は取り消します。親切なふりして、大人って汚い」
「巴も大人だろ?」
「この間も言いましたけど、一緒にしないで下さい。そして数年後を覚悟しておいて下さい」
「こんなことしてりゃ、その頃には俺もクビになってるし、巴はその頃は海外だろ。やっぱクビになってなければ」
田村が笑った。
「多分、このあたりまでは箙司馬のプログラム通りだろ?まあ、死者の割にはよくやったよ。でも、そろそろ生者に任せてもらうこととしよう」
口を開こうとした巴のスマートフォンが鳴った。取り出し、画面を見る。
「HELIXです。安宅教頭のスマホから?動画のアドレス?って、これは?安宅教頭?」