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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第十四章 『死者たちの回廊』
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9. 〝腹話術〟

「腹話術」(高橋葉介)から

『た、助けてくれ』

 動画の中では、怯えた安宅が壁を背にして命乞いをしている。

『こ、これは誤解だ。わ、私は君たちの味方だ』

『しらじらしいんだよ、今更』

 声だけが安宅に答える。

『私利私欲のために、全く無関係な安宅修二の名前まで利用しやがって』

『わ、私は』

『ウルヴズと〝月の裏側〟を利用し、ハウルズの発行部数を増やす。その利権をもってGNロジに役員待遇で迎えられる。同時に、槍の成立を後押しして、ウルヴズを掌握し、私兵として使役する。医用工学の権威だか何だか知らねえが、下らねぇ悪だくみするのだけは得意みたいだな。檜垣鏡三博士』

『ご、誤解だと』

『あんたのせいで、何人が巻き込まれ、何人が死んだ?』

『そ、それは』

『二年前に、取材の過程であんたの秘密をつかんだ雨月学園の絵馬真昼を排除し』

『あ、あれは不幸な』

『そして、ウルヴズと〝月の裏側〟のためと信じ、あんたに騙され、犠牲になった箙司馬』

『ま、待ってくれ』

『まあ、あんたとつるんでたGNロジの道成寺は調子に乗り過ぎたし、自業自得だな。株主は当然のリスクだが、会社は何とかなるだろ?いずれにせよ、あんたが心配することじゃねぇ。どうせあんたは、今から死ぬんだからな』

『ほ、本気か?』

『あんたを殺すこの動画をネットにアップする。今の時代、ネットに投稿された情報はゾンビだ。どれだけ殺しても増えていく。オルヴズより早く、一晩で世界を覆うだろうよ。まあ、それがあんたにできる唯一の償いだな』

『く、口調だ。その口調と声で正体が露見するぞ』

『口調』

 声の調子が変わる。

『口調に何の意味があるのです?そんなものはいくらでも変えられますよ』

 更に声が変わって行く。

『もちろん声も変えられる。そもそもが本当の声ではないしね』

『そ、それは』

『姿だって映ってないし、こんなんで特定されると思ってるなんてばっかじゃないの?』

『た、助けてくれ!許してくれ!』

『許しならあの世で絵馬真昼と箙司馬に請え』

 銃声が響いた。安宅は硬直し、そして胸の下あたりを抑え、壁を背に崩れて行った。

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