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wO-LVes ~オオカミのいる日本~  作者: 海野遊路
第十三章 『存在しなかった惑星』
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5. 〝平気でうそをつく人たち〟

「平気でうそをつく人たち」(M・スコット・ペック)から

「な、何を」

 呉服が眉を顰めた。砧が深夜の方を見やる。

「ミーナからは死角だが、景清とクレアの位置からじゃそれぞれ視点が違う。いくら背後が闇で比較対象がないとはいえ、二人とも、こんな子供だましに気付かない程鈍くないだろ」

「ちょっとキモオタ、何それ?あんたそんなこと言わなかったじゃん」

「言ってないからな。人を安易に信じるな。俺はノノを信じていないから試した」

「ざけんな」

「砧さん?」

「だが、景清とクレアがなぜそれを放置していたのか?それは、二人からすれば、ミーナがエマを倒すのは都合が悪いからだ」

 呉服が砧を見下ろす。

「目的はあくまで、テロの開始の宣言。ミーナは真昼のことを持ち出して利用しただけだろう。今日のところは適当にお茶を濁して宣戦布告という形にすればいい。ただ、目的がテロリズムの演出なら、追う立場が必要だ」

 砧が八島を見る。

「確かにここは電波が悪いが、全く入らないわけじゃない。事実、俺の古いガラケーを出したら景清が破壊しにかかった。古すぎて回路図を知らないため圏外にできないからだ、とも考えられる」

「え?」

 萌が八島の方を向いた。

「八島も当然蜃気楼のからくりには気付いている。そしてもちろん、景清、クレア、俺が、この蜃気楼はしょせん蜃気楼だってわかってることも」

「八島さん?」

「あの信州放送の電波ジャックがあった時、ウルヴズを騙る輩が球体を操っていたが、あれはおそらくウルヴズじゃないし、黒い球体もリモコンを使って、エマみたいに磁力で動かしていたんだろう。クレアはパソコンを開いていたから操作できるし、その画面を見られる位置にいた八島も、当然情報を共有している」

「でも、それって」

 深夜が胸を掴む。

「それって、砧さんがスマホで操ってたんじゃないんですか?だからあの時、八島さんに声をかけられたと同時に、テレビの中の黒い球体が落ちたんじゃ」

「それも演出だ。ああいう場面なら俺がスマホを開くってわかってる、八島とクレアの」

「何、それ?」

「俺がスマホを出した段階で八島が俺に強く言う。俺が、球体とは全く関係ないスマホの操作を止める。同時に、本当に操作していたクレアが球体を落下させる。ウルヴズ問題を発信すると同時に、ネスト内での疑心暗鬼も生み出すことができる」

「でも、チラシ突っ込むって本部を脅せって言ったのはキモオタじゃん」

「あれは八島たちに俺が乗せられただけだろ。俺だって何でも見通せるわけじゃないし、八島たちだって俺の言動パターンをある程度予測してるだろうしな」

「何?じゃあ、景清クンと八島クンと呉服サンでつるんでたってこと?あたしには八島クンを疑ってあんたを信じる理由がないけど」

「俺を信じる必要はない。俺はノノの味方じゃないし。ただ、『自分たちで解錠できる』なんて根拠のないはったりを信じるかどうかは、また別問題だ」

「え?じゃあ」

「鍵だって電子機器だ。オームが今まで解錠しようとしなかったはずないだろ?それが今突然できるようになったと考えるより、クレアや景清を解錠できる奴が背後にいると考えた方が自然だ」

「でも、それって、それなりの権力や権限がないといけないんじゃ?」

「爆発の時、文部科学大臣、道成寺八重子は俺たちを見ただろ? エマ?」

「は、はい」

 深夜が頷く。

「皺こそないけど、道成寺先生とそっくりなお顔で、道成寺先生と同じように、『大丈夫』っていうような、優しい笑顔で。辛かった時、不安だった時に、私を安心させてくれた笑顔で」

「って、じゃあ?文科大臣が解錠したっての?」

「いや、周りが警護者だらけの大臣には難しい。解錠者自体は、もっと身近なところだろう」

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