戦場の命の価値
この作品はフィクションです。
文章が下手かも知れません。
いつからこうなっただろうか。男は一人考えた。彼は普通の人間だ。しかし、人を殺すことに慣れてしまった。彼は人格破綻者でも猟奇殺人犯でもない。
ダニエル・ブラッドレー、ある国の軍人だ。
彼は今、武装組織の制圧任務に就いている。照準を定め、引き金を引く。銃声が響き、反動を体で受ける。敵が血を流して倒れる。眉間に銃弾を受け、生きている人などいない。
「この辺りは安全だ。」
ダニエルは部下に指示を出し、先程まで敵の居た建物の陰へと進む。そこには四人分の銃を持った死体があった。
入隊したばかりの頃は恐怖で何もできなかった。殺す恐怖から銃を撃てず、殺される恐怖から動けず、殺した恐怖から死体を避けていた。しかし今では、前に進み、敵を射殺し、死体から弾薬を盗むこともできる。きっかけとなった人物も、言葉も、体験もない。時間と共に慣れたのだ。
死体の横腹を軽く蹴り、息が無いことを確かめる。
「行くぞ。」
彼は部下引き連れ次の目的地へと向かう。日差しが強く、蒸し焼きになりそうだ。しかし、軍服を脱げば蜂の巣にされてしまう。この戦場の敵は武装組織、そして、この気候だ。
ふと、遠くを見ると、何かが光った。ダニエルは目を凝らす。
「敵襲!!」
大声で叫び、素早く近くの岩陰に飛び込む。あの光はライフルの銃口に反射した光だった。あちこちで砂埃が上がる、戦闘が始まった。敵は銃の扱いに慣れていない様なので、岩陰から頭を出しても狙撃される事は無いだろう。彼は迷う事無く引き金を引き、一番遠くの敵の心臓を撃ち抜く。
銃を持っていても、軍人に突撃するのは自殺行為だ。敵はすぐに全滅した。
「こっちは安全だ。」
「パドック、生きてるか?」
「ああ、平気だ。ただ…」
彼が口を濁した理由はすぐに分かった。
彼のすぐ横で、部下が一人死んでいた。
「クソッ!!」
ダニエルは地面に拳を叩きつけた。敵への怒り、そして部下を守れなかった自分への怒りだ。しかし、周囲に敵の残党がいる可能性もある。
「この先の病院へ行こう。葬式は本国で行う。」
部下の士気が下がれば非常に危険だ。彼は必死に涙を堪え、嗚咽を殺す。
死亡した兵士の葬儀は盛大に行われた。式を終えた後、ダニエルは1人、考えていた。
敵は容赦無く殺し、死体から何かを盗む事も出来る。そして、その死をすぐに忘れる。しかし、仲間が死んだ時は大きな喪失感に襲われる。
命の価値は変わらない。
敵の死も仲間の死も同じだ。
しかし、この差は何だろうか。
数年の月日が経った。男は昔の事を考えていた。
「あの〜ダニエルさん?」
「ああ…すまない。」
「いえいえ。最後に言いたい事はありますか?」
「そうだな……戦いは人の価値観すらも変えちまう。絶対に戦争はいかん。……ありきたりですまない。」
「いいえ。実際の元軍人が語ると重みが違います。」
「そうか、なら良かった。少しでも多くの人に私の本が読まれる事を願っているよ。」
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