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1(ソフィアの本)

エマが任せられた1番始めの仕事はこうだ。

大体の本のチェックをすること。


お喋り好きで噂好きのデータマニアであるヒュー・コリン──31歳の男性司書で、夏の空のように濃い青色の目をしている──が言うには、誰もがまず通る道なんだそう。それはこの図書館がどんな所かしっかり理解してほしいからだとか。


「まぁ、1年かかった人もいるけど頑張ってね。」

コリンはにこやかに言いのけた。「すっごく面白いよ、うん。大変だけど。」


エマはぱちぱちと目を瞬かせ聞き返した。

「1年?」

そう、と男は深く頷き紅茶を啜る。実に美味しそうに飲む。


コリンはデータ収集を目的として、新人に「ソフィアの大木」の 司書のみが歩きまわれる場所 を案内する役割を受け持っている。さっきまで案内してもらっていたところだ。今は、「司書控え室−A」でお茶を頂いている。彼は気さくに話しかける。


さて、エマの落ち着いた様子を一通り眺めたあと(観察したと言った方が正しい、とエマは思った。)、「大体の本っていうのは、」コリンがゆったりと続ける。

「ちょっとばかし手を焼く本、ということだ。」

「手を焼く本。」

エマは自分の声が、自分しか気が付かない程度に喜びに震えるのを感じた。

「そうだ。」彼は頷き、目を細めた。確信を込めて一応きいてくる。「この図書館に、他とは違う本があるとは知ってる?」


その本たちと出会えることを1番楽しみにしていた。

思わずそう口に出してしまいそうだったが、ぐっと耐えた。彼女は自分の感情が表に出ることをあまり好かない。


もちろん、知っている。意思表示に力強くぐっと首を縦に動かす。



「本とは知識の箱だ。」

世界最高峰の学校、マチルダ学院で教授がそう言っていた。


「知識は生き物だ。本はそれを我々に届けて頭の中に住まわせるものだ。箱の形は作者が作り上げたものだから気をつけると良い。箱をうまく開けれないと、間違った解釈を持ってしまう。さて、知識は生き物だと言った。生き物とはひどく厄介なものだ。そして力溢れるものだ。力は時に、ある枠を飛び出してしまう。それは我々の知る常識であったりする。」

教授は優秀な生徒達を見渡してから、セシル、と名を呼んだ。


「ソフィアの大木にはどんな常識を超えた本がある?」


「文字が蠢く本、望むままに大きくなったり小さくなったりする本、絵や写真が動く本、光り輝く本、水の中でしか読めない本、異空間へ飛ばせる本、持った人の気分で表紙の色が変わる本…様々なものがありますが、どれも私達が想像できないような素晴らしい知識が詰め込まれている本です。一般の人へは閲覧禁止になっており、司書の資格がある人ではないと扱うことができません。」

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