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深夜のドライブ

ごめん。どこに投稿していいかわからんやったんや。

先日の話。苛々が募り深夜の量販古物店に行った私である。

てれてれと古書コーナーからエログッズコーナーにさまよい入ろうとした私はふと何の気なしに顔を上げ、カップル繋ぎをしてアダルトコーナーに入ろうとしている馬鹿者たちを見た。

なん…だと。

というやつである。当たり前のように私は妬ましさのあまり理性を薄れさせ(この辺から私らしさが全開です。ついてこられる奴がついてこい)、ふらぁっと彼らの後についてアダルティな場所に踏み入れようとした。


そのときである。


側頭部をぶん殴られたかと思ったのだ。すれ違ったのは、その日、その子にとっての叔母からもらったパーカーを着たうちの二番目……ではなかった。八重歯、眼鏡、くせ毛の天然パーマ、ひょろりと中肉中背の彼は二番目と特徴的に何もかぶっていない。

しかし鮮やかなオレンジとピスタチオグリーンの上っ張りなんぞ滅多にお目にもかかれぬ。

まじまじと私は彼の顔を見、そして一瞬で「まおカレの徳間や!なんや本当に現存したんかいな!」と見抜き、驚愕した。いやいや真面目に、私の中の彼とすれ違った彼は同一人物だったのだ。

私の妄想の中で。

その思い込みの力により通路ですれ違っただけの彼はすぐさま私の中で男子高校生と相成ったがしかし、その瞬間に私はまたもこめかみをぶん殴られた。


何しとる!こんな夜中に!こんな場所で!しかもアンタ、なんで楽しげに同年代の子と肩組んどるんや?!


ええい、どこ取ってもカァチャン許しませんで?! どんな了見でこんな時間にこんなとこにおるんか、どこの親なら許しますかいな、さぁさぁお馬鹿さん、母ちゃんに申し開きできるなら言いなさい!!


……もちろん、もちろん彼が私の妹がうちの二番目にくれたパーカーと同じモノを着ていたのが勘違いした第一の要因なのだが。恐ろしいことに私は頭にかっと血が上り、あやうくガチでその、推定男子高校生を怒鳴りつけるところであった。

ガン見?しましたよ。二度見までした。

じろじろ組んだ肩の手まで見てやったわ!

しかし、当然のように私にも1mmくらいの薄さで理性は存在していた。唇を、歯型が付くくらいに噛みしめつつ足を進める。もはやバカップルへの妬みは飛んだかと思えた私の脳内は支離滅裂だったのだが、進路って急には代えられないよね。私はよろよろとアダルト物販コーナーに辿り着き……エログッズを二人して見定めているヤツラを見た。

見つけてしまったのだ。


さっきの推定高校生について、か、母ちゃんは許しませんけどな……お前らの存在もわりかし真面目に許容は出来ん。人として。


ごぅ、と頭に血が上るのが分かった。その、繋いでいる指が今すぐ腐り落ちるがいい。むしろ今夜、あの彼氏の方のナニが役に立たなければいいのだ。そう、お前にはインポの呪いをかける!!

ほんと、どうでもいい事でかっとくる女で済まぬ。しかし妬ましいのだ。悔しいのだ。深夜のエロコーナーだよ?ババア一人だよ?!なんだこの惨めさ!ネタか?!

私はぐっと拳を握りしめた。変質者チックで申し訳ないが本気で彼らの繋いだ手指に「きぇぇぇっっ!」と手刀をかましそうで怖かったのだ。我ながら冷ややかな目をして彼女の側から取った性交用のオイルにはカカオバターがふんだんに使われており、リラックスできるらしい。なるほど。

使う予定がビタイチないね。

はは、彼らの手元をちろちろ見てやったので男の方がじゃっかん居心地悪そうだ。ふひひ、お前なんぞ秋の初めにこの冷感ローション(値下げ済み)を買って顰蹙までかうがいい。地獄に落ちろ。いやさ捥げろ。


私はなおもぐっと拳を握る。ローションはかろうじて棚に戻したがもはやアナル開発グッズを見る余裕はない。早く何かを手に取らないと手刀が。この呪われた右手が黄金何とかを繰り出しそうで怖い。


ふ、と目についたものを、私は手に取った。毎シーズン初期に出る家電のカタログを家電芸人に与えた時のように(見たことはないが的確な例えだと信じてる)、真剣な目をして商品と説明リーフレットを見比べ、様々なことを学習していく。ほほぅ。ふむ。勉強になるなぁエロコーナー。


くすりと笑った彼女に禿げの呪いと胸から体重の落ちる切実なる願いを神に祈っておいて、私は彼らが何も買わずに物販エロコーナーから退出していくのを意識の片隅で知覚した。うん、本当は視界の端で見るくらい意識してた。帰れ。お前らなんかやっすい中古車のシートで何かの汁まみれになるがいいよ!


ひとり言をかろうじて噛み殺しながら勝利のタップは足で踏んだ。

私は青とシルバーのボーダー柄をそっと棚に戻す。テンガ万歳。多種類万歳。そして、研究熱心なオナホ開発者よ、私が思うにオマエら、欲求不満なのか?!エロへの探求心、ちょい行き過ぎてくないか?


私は何も買わずにエロコーナーを勇ましく出ていく。深夜の客としては迷惑この上ないだろう。大体、私が入っていくとたいがいの男性客はぎょっとしてコーナーからそそくさと立ち去ってしまう。私としては一度でいい、ざっくばらんに彼らから使用感を聞きたいのだが。特に4Kgの重量を持ったリアル尻のグッズな。「そこしかいらね」という潔さがにじみ出た一品な。カッコイイよ、むしろ。漢だよ。ああ。


男か。


ため息をつきながら私は暖簾をくぐり(エロコーナー明示のために掛けられてる)、くそ寒い店外へと出る。あったかいココアが飲みたい。太るか。そうか。そうだな。

デブなババアには世間も冷たいよ。



そうして、私は最初から最後までひとっことも喋らず、深夜のドライブを終えた。


ということで、不満があったら削除いたします。ご遠慮なく、ババアの妬み、臭い、と。ばっちこい。エアで。

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