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少女

 ちょっとためて書いています。拙い文章表現に書いている中ずっとため息しか出ませんでした。


「ギルド会館だって?お嬢ちゃんにゃ入れやしないよ」


 聞く人聞く人その全員に呆れを含んだ手を振られ、一時間が過ぎるころ、やっと親切なお子様に案内され(最初から子どもに聞けば良かったと後悔した)やっとギルド会館に来れた。

 お子様にはお礼に飴をやったのだが、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて走って行った。あんなに喜ぶことなのだろうか。子どもは甘いものが好きだ。これにどの世界も変わりはない。

 ここへ来れば、アキラの目的は半分達成される。表情も和らぎ(周りからはただの子どもの顔)子さっさと扉を押して、会館の受付へ行った。

 

 

 

 

「なんでギルド名が消えたんだろう。おかしい」

 

 ギルド会館であることをちゃんと調べてもらいたかったのだ。このためにはある程度の大きい都市でないと、偽装カードが作られたり、犯罪に利用されたりするのだ。ゲームだがしっかりしている。外国なら日本人は格好のエサだ。平和ボケした日本人の私はこの数日間で、体験している。この世界で。そうだ、この世界はとても以前のゲームのころのようにはいかない。リアルになった。もう自分はこの世界で生きて呼吸しているのだ。モンスターの重さ、気配、空気、そして血。ゲームのころにさえわからなかった、なにかの力。私は絶望するにはまだ地球に未練がある。

 

「おかしい・・・・・・」

 

 そして、今。アキラのギルド名が登録されていないといわれた。

 この世界のパソコン代わりの丸いマジックアイテムを受付嬢に見てもらったが、がっくり肩を落とした。

 

「三年間なにもクエストを受けていないと登録は抹消されます。そのせいでしょうね」

 新たにギルドを登録なさいますか?そう聞かれて、知らないうちにもう三年が過ぎていたという事実にもびっくりだった。あそこで気が付いた時から、それほど経っている記憶がないのだ。当たり前だ、だって、ゲームしにきたのに。これはすべてゲームのせいなのか?ずうんと胃が重くなった。

 

「このギルド名で登録したいのですが」

「ええと、15歳以下の方の登録はできませんが?」

 

 新たに作るしかない、そう一瞬で決意してそういったが、やっぱりの反応であった。一時間近くもそう見られたのだ。近くにいたヒトたちも、くすっと笑っている。

 アキラはため息を吐いてからカードを見せた。都市に入るために発行したカードには、年齢も記入されているのだ。名前、性別、年齢が必ず入り、偽証不可能だ。ここは貴族がいる大都市だ。面倒だが、しかし素晴らしい性能のカードだ。こういうときに使うのだ。

 

「えっ!?に、28歳なの!?し、失礼しました!登録にはしばしお時間を頂きますのでお待ちください!」

 

 慌てて奥に入って行く受付嬢の姿に、アキラをぽかんと見てくるおっさんたちへ、アキラはにっこりと微笑んでやった。

 

「お待たせいたしました。ええと、ギルド『六色』、百年前に同じ名前のギルド名がございましたが、ご家族の方のギルドですか?」

「詮索はちょっと・・・・・・(同名ギルドがあったのかーへええ)」

「あ、失礼しました。そのギルドが、ちょっと変わったギルドだったという経歴がありまして・・・・・・」

 

 ギルドカードを受け取って、そのカードを大事にマジックポケットの大切スペースに入れた。このスペースはよほど大きなもの以外の『物』を全て入れられて、おまけに盗難防止魔法使用である。物凄く便利である。

 同名ギルドが百年前にあったという情報は初耳であったが、それよりもと、アキラはさっそくクエストのスライムの核というものを受けようとした。もはやおかしいほどの意欲満々な初心者冒険者のやる気に、視線を浴びていたが。

 

「あの・・・・・・」

「うえあ?」

 

 集中していたため、おかしな返事をしてしまった。

 女の子がいた。アキラより背が高い。ローブを着て、杖を両手に握りしめ、真っ赤な顔でアキラを見ていた。初心者のようだ。アキラも今そのように見えるが。

 

「なにか?」

「あの、その、えっと・・・・・・」

 

 しどろもどろの彼女にアキラは首を傾けた。一緒に行こうとか言われそうだと、定番の台詞の数多にある小説を思い出しつつそのまま大人しくていると、やはりその通りであった。

 

「よろしければ、私と、クエスト一緒に行きませんか?」

「いいですよ」

 

 一秒も待たずに答えた私に彼女は口を開けていた。なんだよもう。

 

 

 

 

 

「ぎゃっ!ぐえっ」

「・・・・・・」

「ひいいい!えいっ!」

「・・・・・・」

「このっ!たあっ!」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 アキラはスライムを、彼女ことリズは、草を探すクエストらしく、街から数キロ離れた草むらに向かった。

 都市の外はめっきり人がいなくなり(当たり前である)とても気が楽になった。ロリコンがいないのが一番いい。

 リズはさっきから声を上げて忙しく戦っているが、これでは林になかなか着かない。

 ウルフ種は耳がやたらいい。彼女の威勢のいい声が耳に入ればすぐにでも来てしまうだろう。

 アキラの探しているスライムは林の奥の水辺にいる。本当は、アキラはギルド初心者でGランクなのだが、レベルカンストしているためぎりぎり受けれるEランクのクエストを選択したのだ。二つ上のランクまでで、危険がそうないようなクエストならば受けられるのだ。まあ、初心者冒険者のクエストで、冒険者の半分が大怪我か、死亡しているのだが。

 それでもいつだってモンスターは星の数ほど沸いていくし、強くなってほしい冒険者をみすみす殺す真似はできない。

 受付嬢も訓練をしているので危険なクエストを初心者にさせるわけはないのだ。

 冒険者でない者が勝手に外で死んでもギルドも冒険者も騎士たちも、もちろん貴族も関係ない。だが、冒険者がいなくなるととても困る事態が発生するのだ。騎士はうろうろと街の門から外へ離れることはできないし、冒険者はやすやすと貴族街を徘徊できない。歩くのも罰が与えられてしまうことさえある。

 まったくファンタジーな世界に来たものだとアキラは無駄な思考をしつつ向かってくるモンスターを蹴り殺す。

 歳を(わざと)教えたため、ギルドの受付嬢さんはおどおどと承諾してくれた。回りのおっさんたちがなにも言わなかったのですんなり外まで来れた。リズは15歳そのものといった可愛らしい女子で、怖がりながらも草むらによく出る非常に弱い初心者練習用の見本モンスターみたいな存在である丸豚『グリーンポーク』と戦闘中だ。こいつは劇的に弱く、最初の敵にしてもただのやられ役だ。弱くて、落とすお肉が美味で、そこら辺にいて、足が遅くて、中型犬くらいの丸い豚さんだ。魔法職でも杖で数回殴れば十分殺せる。ほら、倒せた。七発で。クリティカルヒットだと一発なのだが、それは教えない。それも踏まえて経験である。簡単に強くなっても経験にならないからだ。頭でっかちはすぐ死ぬ。私もこのレベルカンストの体が無ければ一体どうなっていたことやら。

 

「やった!アキラさん、お肉半分差し上げます」

「ありがとうございます(いらねーけど貰っとくか)」

 

 アキラたちは二時間ほどそうして、ちょっと戦いに慣れてきたリズを林から数百メートルほどの場所で残して、都合もあるので(リズだと林の中は絶対危険である)しばらく自由行動ということにした。アキラのクエストの目標はスライムである。核が必要なのだ。

 リズは休憩中だ。丸豚を十匹以上倒したが、疲れたらしい。なんて体力の無さ。私もやり始めはよくゲームオーバーしたが、もっともっと倒したはずだ。楽しかったなあと思い出す。

 

「林のすぐ奥にロックスパイダーが二匹、まあだいじょぶ」

 

 皮膚が岩で覆われている大きな蜘蛛だ。大きさは仔牛ほど。下級ファイアで死ぬが、うざい糸攻撃と、固い岩の皮膚で防御力が高いことが不人気の序盤モンスターである。さらになにもアイテムを落とさないのも非常に悪いモンスターである(売れるところがないのは欠点だ!)。アキラはファイヤを連発して、気配察知に入ってきたモンスターを次々撃破していく。そして難なく十分ほどでスライムを見つけて、早々林から出た。

 

「おっ?」

 

 アキラはスキルの半分を自分の能力上げには使っていない。たまに使っていたのは足の速さとか、スタミナとか、状態異常耐性、気配察知くらいだ。パワーも魔力も自然に上がったたままだ。スタミナは体力とは違い、疲労や攻撃の時間短縮のために思ったよりも重要なものだ。その代り、気配察知レベル最高のアキラは、すぐリズの居場所の様子がわかった。

 

 

 

 

 

「ひいい!!!」

 

 リズはそれほど間を置いてない距離に立つ相手に、青ざめてガチガチと震えていた。アキラがすぐ来ると言い、まだ十分ほどしか経っていない。この見晴らしのいい低レベルモンスターだけだから安心よと言われた場所に、こんな目立つモンスターが自分に近づいていたのに、どうしてわからなかったのだろうか。

 

「ぐるるるるる・・・・・・」

 

 唸り声に気づいてから声を上げなかった自分を褒めた。

 小山のようなウルフは体色が新緑色をしていた。明らかな向かう殺気に死を想像するしかなかった。

 

「こんな、でかいやつがいるなんて、言わなかったじゃない・・・・・・」

 

 プラントウルフなんて優しいものじゃない。それを三倍にして、凶暴さをその倍にしたくらいやばいやつだった。なのにその空間に声がするりと入ってきた。

 

「リズさん、これ、いつ来ましたか?」

「え?」

 

 隣にいつの間にかアキラが立っていた。リズは呆気にとられて一瞬モンスターを忘れた。

 

「これ、GどころかEランクでも無理ですよ。マッドウルフです。一般のDランク冒険者が三人でもぎりぎりのモンスター。リズは魔法使える?」

 

 丁寧な言葉遣いをやめた彼女から、時間がないのだという気を感じた。モンスターがアキラに警戒している。体制を低くし、いつでも躍り掛かれるようにしている。

 

「私は、回復と、身体能力向上魔法しか・・・・・・」

 

 まだまだ下級の魔法しか扱えない自分に向かい無言で暴言を吐く。なのに明るい声がすぐに響いた。

 

「いいね、身体能力上げて早く都市へ行って。私は時間を稼ぐから」

「・・・・・・!!?駄目!そんな、無理だよ!死んじゃうよ!」

 

 アキラは小さい。街まで何分かかるかわからないのに、応援を呼んでくるまでこの少女が時間を稼ぐ力があるとは全然思えなかった。

 

「あなたは早く街に行って。足止めの魔法があるんです」

「足止め・・・・・・?」

「早く。私たちはラッキーです。マッドウルフは基本的に一匹で行動します。まだ仲間も呼ばれていないし、私はまだまだ魔力が余っている。あなたは早く走れる。チャンスです。死なないために早く」

「でも・・・・・・私が戻ってこなかったら・・・・・・?」

 

 冒険者は頼りになりそうで、卑怯だ。仲間も友人だと思っていたヒトも、モンスターの前に絆は簡単に引きちぎれる。リズは心臓が破裂しそうな今、どうして言葉にしてしまったのだろうと猛烈に後悔してしまった。

 アキラはふうと呆れたようにため息を吐き、リズへ向いた。もちろんモンスターを警戒しながら。

 

「そんな人と、ここまでわざわざ来ません。それくらいの勘はあります。それともいままでのあなたは偽った性格で、囮用にと私に話しかけてきたとでも?」

「それは、ないです!」

「なら早く。まあ、たぶん、間に合う」

「・・・・・・本当に、任せてもいいんですか?」

「さあ、行って」

 

 リズはただでさえここを離れたいと思っていたのだ。じりじりと、そしてたたたたっと聞こえて、やがて遠くにいった足音を背に、私は巨大な狼と一対一で向かい合った。ローブの分け目から、初めて見せた短い杖に、マッドウルフはびくっと巨体を固まらせた。

 

「まあ、野生のモンスターだものね、わかるか」

 

 どこかぼんやりと言い、少女は狼にゆっくり杖を向けた。

 

 

 


後編へ。

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