十五話
あれから襲撃者は全て鎮圧された。
学園中心部を襲った襲撃者は聖遺物を強奪して素早く戦域から離れて、姿を眩ました。その数は30人よりも少なかったそうだ。学園中心部の防衛部隊とセキュリティを全て破り、一部の聖遺物を複数持ち出している。その過程にこの学園の教師、生徒が100人以上倒されている。この事からかなり精鋭だった事が分かる。
全員が顔を隠しており正体は未だに不明だ。
どうやら、勾輝達が交戦した部隊と同じ手の者だと思われ、そちらは陽動だったようだ。
学園の損害は北東の防御施設、学園中心部の防衛施設、生徒約1900人の負傷、その内重傷者は約300人である。今回の戦闘参加者は生徒が約2600人、教師は30人である。演習場では約2500人が戦闘をしていて負傷者も1800人を越えていながらも重傷者が250人程で済んだ。それは制服に自動防御機能があったおかげだろう。この制服は魔術が使える者が着れば車に跳ねられても軽症で済む。ただし、軽症で済むダメージでは自動防御がされない為、軽症者が多いのである。
死亡した人間は0である。
その情報を校長は生徒の全てに伝えた。
そして今、勾輝は部屋で自分の父親―洋次―の前に立っている。
「父さん。今回の事件父さんはどのくらい関わっているんだ?」
「何を言っているんだ。俺がそんな事に関わっている訳が無いだろ。」
「しらばっくれないでくれないか。あの幻獣は、父さんが持ってたものだろ。」
勾輝は、洋次を問い詰める。
「父さんが大量に幻獣を降霊出来て、その幻獣は父さんしか呼べない。そして、父さんが副業として幻獣の降霊術の術式を貸して稼いでるのは知っている。今回の幻獣は父さんのものだ。」
「そうか。ばれたか。まぁいいだろう。確かに俺が幻獣の術式を貸して、この事件の事は知っていたが計画そのものには関わっていないし、詳しくも知らないぞ。」
問い詰められた洋次はあっさりと軽い口調で語った。
「事件の事知ってたなら息子が関わるんだからもっと真剣になれよ。あの幻獣にどれだけ手間取った事だと思っているんだ。今日だって夕華が倒さなかったら大変だったんだぞ。」
そのあまりにも軽く語るせいで声に力がこもってしまった。
「これも息子の成長へのいい試練になるだろうと黙認したんだ。実際被害はそこまでだし、お前も無事だろう。それにもう使えないようにしてある。」
未だに納得出来ないがこれ以上は無駄だと思い洋次との会話を切り上げた。
「…まだお前の道はこれからだ、勾輝。」
洋次は一人呟いた。
校長室にて
勾輝は校長に直談判しに来ていた。
「校長。あんた工作員の手引きしてただろ。」
目の前の校長に向かってはっきりと言った。
「ふむ。確かにそうだが。」
「…何故だ。」
「ある方面から政治的圧力がかかったのだよ。そして、こちらとしても都合がよかったからのう。」
スラスラと流れるような口調で喋る。
「都合がよかったからとは?」
政治的圧力がかかった事は聞かない方が良いと思い都合がよかった事に関して聞いた。
「訓練の相手としてちょうど良かったからのう。」
確かに金がかからないだろう。
「しかし、相手が死なないように気を使っている様子は無かったんだ。死亡者が出ていたらかもしれないぞ。」
「それも含めてちょうど良いと言ったのじゃよ。本気で襲って来た上て死者は出ないと判断しておった。それに、この程度で死ぬようではのう……。 入学式で言ったじゃろうに。ここは『力』の為の学園だと。」
「………。」
勾輝は反論するが、それすらも理によって論破される。確かにこの事件で死ぬようではこの学園から出た後に殆どの生徒が行く軍では通用しない。校長は理によってこの場を支配していた。
「これは君達一年生の未熟さを露呈したじゃろ。重傷者の8割近くが君達一年生。戦闘に参加した850人の内戦闘終了に戦闘可能だった者は30人程度とはな。」
勾輝はもはや何も言えず、立ち去るしか無かった。
勾輝が立ち去った校長室にある声が響く。
「ちょっと~。今回の事件の被害は少し多いよ。勾輝にあそこまで言う必要ないよ。」
「予測よりはな。だが、これは良い経験になったじゃろう。お前もそうじゃろう。工作員の手引きまでしたからのう。」
校長ともう一人の少女―夕華―が喋る。
「それに今回の件は目的からすれば、相手は成功したが、被害は充分に与えた。これからの敵戦力がかなり減る事じゃろう。まぁ、あの村雲が言う事は一理あった。儂も面白そうだったから手引きまでしたんだからのう。」
「全くおじいちゃんは久し振りにあったと思ったら相変わらず何だから。急に行方を眩ませたと思ったら学園の校長になっているし、軍事演習にまで現れるからびっくりしたよ。」
「いやはや、そこは勘弁して欲しいのう……。」
某所にて
「今回の襲撃の戦力の消耗が予想よりも大きい。」
「あの狂人め!」
「あの契約も切れましたし、厳しいですな。」
「しかし、聖遺物の奪還に成功しただけでも良かったです。これであれを実行できます。」
「あの狂人相手に上出来でしょう。あの戦力で成功したのも神の導きでしょう。」
「そうだな。ではあの作戦を実行に移す。」
「「神の加護を」」
某所にて
「ふ、ふふふ♪全て計画通りよ。全ては私の手のひらの上♪」
あらゆる状況を聞き、知ってあるものは笑う。
一章の本編を完結します。
次話からは少し休憩してのんびりする予定です。
予定なので変更の可能性があります。




