お邪魔しますサナチア王国
辺りがすっかり夕焼けに染まった頃に遂に馬車が国境に到着した。
「少年‼着いたぞ‼」
御者の声で俺は目を覚ます。いつの間にか話し疲れて寝てしまったようだ。
国境であろう場所に大きな壁がある。
想像してた物より5倍はでかい。
「ありがとうございます。今料金払いますね」
俺があせあせと財布をマジックバックから探していると御者が話しかけてきた。
「料金なんていらないぜ少年‼家出途中なら金は大切にしな。久しぶりに昔のことを語れたからそれでわしは満足だ。魔物に気を付けるんだぞ」
「いいんですか?ではお言葉に甘えさせてのいただきます」
俺はこうして御者、いや、家出仲間と別れた。
「さて、この壁をどうやって乗り越えようか…」
高さのことを考えたらやはり風魔法で上を通るのは難しいな。痕跡が残るからあまり使いたくないが物理的に壊すしかないか。この壁を壊す魔法の組み合わせは中級魔法が必要だな。
「超質量氷河砲‼(氷河+物体縮小+放出)」
ドォォォン
すっぽりと壁に人が入れるほどの穴が空いた。どうやら氷の勢いが強過ぎたのか貫通してしまったようだ。
即席で編み出した技だったが想像以上に上手く行ったな物体縮小を使うことで氷の密度も上がるのか。今後も他の技に応用できそうだな。
「お邪魔しますサナチア王国」
国境を跨ぐとそこには夕焼けに照らされた草原があった。
なんてことのない光景だが。遂に家出を成し遂げたと言う感動と喜びで胸が一杯だ。
「これから何をしよう、商売をしてもいいし異世界らしく冒険をするのも良いな。今度こそ俺はやりたいこと全部やってから死ぬんだ」
日が落ちていく中、俺は前世の俺に語りかけるように言った。