宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード6「ぽかぽかの昼下がり」
ニャーバスター号は、柔らかなオレンジ色の恒星「ソルナティカ」の周辺を漂っていた。
その星の穏やかな輝きは、遠くからでも温かさを感じさせ、冷たい宇宙空間に心地よい空気を運んでくれるようだった。
ミャクターは今日の航行スケジュールを切り上げ、船内のルーフトップデッキに特製のソーラーカーテンを張った。
「船長、これ、何してるの?」
トビーが不思議そうに尋ねると、ミャクターは尻尾を三本ともゆっくり揺らしながら答えた。
「今日は重要なミッションだ 日向ぼっこだ」
「えぇっ、それってただのサボりじゃない?」
「サボりじゃない 充電だ」
ミャクターはきっぱりと言い放ち、トビーをデッキの柔らかなラグの上に誘った。
***
ミャクターが用意したのは、特製の宇宙ハンモックと極上のふかふかクッション。
ラグの上には小さなティーセットも置かれ、香り豊かなカモミールティーが注がれていた。
「船長、なんか贅沢だね 今日は特別な日なの?」
「そういうわけじゃない ただ、たまにはこういう時間が必要だと思っただけだ」
ミャクターはそう言いながらハンモックに飛び乗り、三本の尻尾を器用に絡めて体を安定させた。
***
デッキに降り注ぐ太陽光が、二人を穏やかに包み込む。
トビーは船長の隣に座り、肩を伸ばして大きくあくびをした。
「船長、なんだかこうしてると、宇宙のことも全部どうでもよくなるね」
「その感覚が重要なんだよ、トビー」
「え?」
「宇宙の果てまで冒険しても、たまにこうして何も考えずに太陽の温かさを感じる それがあるからこそ、また立ち上がれる」
ミャクターは目を閉じながら、三本の尻尾をふんわりと揺らした。
「船長って、いつも忙しそうなのに、こういう時間を大切にするんだね」
トビーはハンモックの端に手をかけながら小声でつぶやいた。
「お前も知っているだろう キャプテンというのは常に何かを守らなきゃいけない だからこそ、自分を守る時間を取ることが重要なんだ」
トビーはその言葉に少し驚きつつも、なんだか心がぽかぽかしてきた。
***
しばらくして、トビーはラグの上でごろんと横になり、うとうととし始めた。
ミャクターもすでにハンモックで目を閉じている。
「船長、あのさ……」
トビーが寝ぼけたような声でつぶやいた。
「なんだ」
ミャクターも半分眠りながら答える。
「こういう時間、けっこう好きだよ」
ミャクターは返事をしなかったが、三本の尻尾がほんの少し動いて、トビーの毛布代わりにそっとかぶせた。
「ありがとう、船長……」
***
その後、ニャーバスター号のルーフトップデッキには静かな眠りの気配が漂った。
二人の穏やかな寝息が太陽の光に溶け込み、船は宇宙を漂い続ける。
どこまでも広がる宇宙でも、ぽかぽかの日向ぼっこは最高の贅沢だと、ミャクターもトビーも思っていた。