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宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード56「ミャクターと猫騎士⑤」

 ニャーバスター号から降り立ち、ミャクターたちは観客で埋め尽くされたコロッセウムへと向かう。会場内は熱気に包まれ、多くの貴族や観衆が明日の戦いを待ちわびていた。その中、彼らの前に現れたのは精悍な顔つきの剣闘士と幼い子どもだった。


「……あんたがミャクター船長だな?」


 男は鋭い目でミャクターを見つめながら言った。


「その通りだが、あんたは?」


 ミャクターが問い返すと、男は堂々と胸を張り、自らを名乗った。


「俺はカイン。このコロッセウムで数々の試合を制してきた、ここ一番の剣闘士だ。アンフェア大臣にスカウトされ、彼の騎士として戦うことになった」


 男の傍らに立つ幼い子どもが、ミャクターたちをじっと見上げている。


「あぁ、こいつの名前はアストリアだ。俺の愛娘でな。妻は流行り病で亡くなっちまって、オレが剣闘で稼いでコイツを育ててるってわけだ」


「あんたの噂は聞いている。銀河中を渡り歩き、数々の伝説を作ってきた冒険者だろう?」


 カインは少し笑みを浮かべながら言った。


「俺は、お前みたいな相手と戦う機会なんてそうそうない。だから、一度ちゃんと会っておきたかったんだ」


 ミャクターは驚いたように目を細めた。


「オレにそんな興味があるなんてな。けど、光栄だよ」


「楽しみにしてるぜ、ミャクター船長」


 カインは力強い握手を求め、ミャクターはそれに応えた。


 すると、アストリアが父の手をぎゅっと握り、ミャクターに向かって言った。


「お父さんは最強なんだから! あなたにも負けないよ!」


 カインは少し苦笑しながら娘の頭を撫でた。


「おいおい、ミャクター船長を敵に回すようなこと言うなよ。でも、ありがとな、アストリア」


 ミャクターはそのやり取りに微笑んだ。


「いい娘だな、カイン。ますます負けられなくなったぜ」


「あぁ! 正々堂々と戦うことを約束する。それを宣言しに来た。それが俺の流儀なんだ! ま、よろしく頼む!」


 カインは力強く言い放つと、アストリアの手を引きながら去っていった。


「……あの大臣が用意したとは思えないほど清々しい、ちゃんとした人ですね」


 トビーがミャクターに語り掛ける。


「……あれはかなり手強い相手だ……。だが、面白い。オレも久々に全力で戦えそうだぜ」


 ミャクターは彼の姿を見送りながら呟いた。


***


 会場内にミャクター一行は通され、ミャクターのみ剣闘士の待機所へと案内された。試合開始までの待機を命じられる。いよいよとなった戦いに備えて静かに集中するミャクター。


 トビーとアリーシャ姫は特設の観覧席から会場内をハラハラしながら見守ることとなる。


 やがて、会場内は満員となり、観客の熱気と歓声が轟く中、ついに決闘の時がやってきた。


 ミャクターがコロッセウムの中央に立つと、対峙する男――カインが現れた。しかし、その表情は先ほどの正々堂々とした剣闘士のそれではなく、鬼のように歪み、目は血走っている。


「……カイン、どうした?」


 ミャクターは問いかけるが、返事はない。ただ異常な気迫を纏いながら、カインは剣をバターに突き刺すかのように軽々と地面に突き刺した。


 司会の声が会場に響く。


「この試合はどちらかが倒れるか、降参するまで続行される。そして、会場内に散らばる武器の使用も許可されている。ただし、不正行為は厳禁だ!」


 説明が終わると、中央で対峙した二人に決闘の儀の開始が告げられる。


 開始の合図とともに、カインが猛然と襲いかかる。その力と速さは尋常ではなく、ミャクターは尻尾を駆使して立体的な動きを取り、なんとか攻撃をかわすが、次第に追い詰められていく。


「何があったんだ、カイン!?」


 ミャクターが叫ぶと、カインが苦しげに答えた。


「くそっ……! 俺は薬で操られているんだ……! もし俺が負けたら、あの人間が……娘を……!」


「なんだって!?」


(自らが勝利を収めるためにそこまでやるのか! アンフェアの奴め!!!)


 ミャクターの正義の心に怒りの炎が灯った!


「トビー! いいか、よく聞け! カインの娘が人質に取られてる。会場内のどこかに囚われているはずだ。何とか探し出して助け出してやってくれ!」


「ええっ!? 僕が!?」


 トビーは一瞬動揺するが、すぐに真剣な表情に変わった。


「わかりました、船長! やってみます!」


(僕がやらなくちゃ! 船長も姫もここで終わってしまう!)


 トビーは観客席を抜け出し、大臣の陣営を探り始めた。


 一方、カインの猛攻にミャクターは苦戦を強いられる。薬の影響で凶暴化したカインは、次第に自我を失っていくようだった。ミャクターはできるだけ傷つけずに戦おうとするが、凶暴化していくカインの力に翻弄され始める。


「カイン! 気を確かに持て! 娘のことならオレの仲間が必ず助け出す!」


 ミャクターの言葉に、カインの瞳に正気が一瞬戻る。


「あぁ……アストリア……アストリア……オレが、オレがぁぁぁぁぁ!」


 再び意識を閉ざしたカインの猛攻が始まる。


 同じころ、トビーはアストリアの監禁場所を突き止め、彼女を救出し、会場へと急いでいた。


「船長! 娘さんを助けました!」


 通信で報告が届き、ミャクターは笑みを浮かべた。


「よくやった、トビー。これで遠慮なく戦える!」


 試合は最終局面を迎え、ミャクターはカインを圧倒し勝利を収めた。しかし、アンフェア大臣は最後の悪あがきを企て――。


 果たして、ミャクターたちは大臣の策略を打ち砕くことができるのか!?


 決着の時が迫る――。

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