宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード4「三本尻尾の秘密が知りたい!」
ニャーバスター号は、のどかな星系「カーム・リング」に向かってゆっくりと進んでいた。
宇宙空間には静寂が広がり、エンジンの規則的な振動が心地よく船内に響いていた。
トビーはコックピットで暇を持て余していた。
船長であるミャクターは、いつものようにキャプテンシートに座り、銀河地図を眺めている。
「ねえ、船長」
トビーが思い切って話しかけた。
「なんだ、トビー 退屈なら掃除でもしておけ」
「いや、そういうんじゃなくてさ、ずっと気になってたんだけど、どうして船長って普通の猫と違って、尻尾が三本もあるの?」
ミャクターの耳がピクリと動いたが、彼は表情を変えずに地図に視線を戻した。
「……それは、今お前に話すべきことではない」
「ええー!?どうしてだよ!」
トビーは興奮気味に身を乗り出した。
「お前は好奇心が強いのはいいが、こればかりは軽々しく話せることではない」
ミャクターの声には珍しく硬い響きがあった。
「そんなに大事な事なの?」
トビーはミャクターの三本の尻尾をちらりと見た。
それはいつものように忙しなく動いていて、明らかに彼の心中が穏やかでないことを示していた。
「トビー、お前がその質問をするのはこれで三度目だな」
ミャクターはため息をつきながら立ち上がり、コックピットを歩き始めた。
「お、覚えてたの?」
「忘れるわけがないだろう この尻尾のことを聞くたびに、お前は目をキラキラさせて騒ぎ立てるからな」
「だってさ、三本の尻尾って宇宙でも珍しいんでしょ?僕が知ってる猫型エイリアンのデータベースにも、そんな特徴のある種族は載ってなかったよ」
ミャクターはしばらく黙った後、ゆっくりと口を開いた。
「……そのデータベースに載っていない理由があるのさ」
「理由?」
「理由だ」
ミャクターは断固とした口調でそれ以上話す気がないことを示したが、トビーの好奇心の火は完全に燃え上がっていた。
「船長、僕たちは相棒だろ?船長のことをもっと知りたいんだよ」
トビーは必死だった。
ミャクターの秘密には、きっと大切な意味があると感じていた。
「お前にとって相棒というのは、すべてを知ることだと思うのか?」
ミャクターは尻尾を振りながら静かに言った。
「え?」
「相棒というのは、互いに信頼し合い、必要なときに必要なことを話す関係だ すべてをさらけ出すことではない」
「でもさ…」
トビーは言葉を失った。
「お前がどうしても知りたいなら、いずれ話す時が来るだろう」
ミャクターはキャプテンシートに戻り、銀河地図に視線を戻した。
「今話すべき時ではないが、これだけは言っておこう 三本の尻尾は、オレの過去に深く関わっている それが、ある種の決意の象徴だということだ」
「決意の象徴?」
「そうだ そして、その決意を話すというのは、オレにとって簡単なことではない だから今はそれ以上、追及しないでくれ」
トビーはしばらく黙っていたが、やがて小さくうなずいた。
「わかったよ、船長 でも、いつか話せる日が来たら、聞かせてね」
ミャクターはトビーに一瞬だけ視線を向け、尻尾を三本ともふわりと振った。
「その時が来たらな」
***
その後、ミャクターとトビーは何事もなかったように宇宙の冒険を続けたが、トビーの心の中にはミャクターの三本の尻尾にまつわる謎が深く刻み込まれていた。
「きっと、船長の秘密にはすごい物語があるんだろうな」
トビーは星空を見上げながら独り言をつぶやいた。
ミャクターはそれを聞きつつも、窓辺から広がる無限の宇宙を見つめながら、ただ静かに三本の尻尾をゆらゆらと揺らしていた。