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宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード39「ミャクターとキラキラの流れ星(後編)」

 静かな時間は長くは続かなかった。

 姫たちを乗せたニャーバスター号は銀河連盟本部へと進んでいたが、追手がすぐに現れないことが、逆に二人を不安にさせていた。


「船長、妙に静かですね」


 トビーが周囲を警戒するようにモニターを覗き込む。


「……ああ、確かにな……」


 ミャクターは操縦桿を握りながら尻尾を揺らして考え込む。


「このまま無事にたどり着けるなら良いが、そう甘くはないだろう」


 姫と従者たちは後方の席で神妙な面持ちだったが、ミャクターとトビーに対する信頼を抱くようになっていた。

 彼らにとって、この二人は最後の希望だった。


***


 やがて星図上で銀河連盟本部直前の中立地帯に差しかかった。


「ようやくここまで来ましたね」


 トビーがほっとしたように息をつくと、ミャクターは表情を引き締める。


「油断するな。こういう宙域には往々にして伏兵が潜んでいるものだ」


 その予感は当たった。

 レーダーに敵船が複数、事前に待ち構えているような配置で映し出された。


「あいつら……ここで待ち伏せしていたのか!」


 ミャクターは尻尾をぴんと立て、即座に回避行動を取ろうとするが、敵も容易には隙を見せない。


 さらに突然、通信画面が乱れ、ノイズが走る。


「船長、通信妨害です! この領域をジャミングして、救難信号を出せないようにしている!」


 トビーが狼狽する中、姫は悲痛な面持ちで目を閉じた。


「このままでは……」


「落ち着け、トビー。何か方法があるはずだ」


 ミャクターが冷静に操縦し、敵船の攻撃をかいくぐる。

 だが、敵は今回、用意周到に戦力を整え、本気で追いつめようとしている。

 レーザーが船体をかすめ、シールドが徐々に削られていく。


「このままじゃ絶体絶命じゃないですか、船長!」


 トビーが悲鳴に近い声を上げる。


「まだだ、諦めるな!」


 ミャクターは直感的な機敏さで操縦桿を操作し、デブリや宇宙ガス雲を利用して敵をかわそうとするが、包囲網がじわじわと狭まっていた。


 その時、トビーはハッと思いつく!


「船長、通常回線が使えなくても、あの人なら……!」


「誰だ?」


「サラ・エクレール高官ですよ! 以前、個人用の緊急通信デバイスをいただいてます! あの人になら、個人的に緊急シグナルが送れるかもしれません」


 トビーは秘蔵のデバイスを引っ張り出し、ジャミングをかいくぐる特殊信号を発信する。


「そっちは頼むぞ、トビー!」


 ミャクターは尻尾で椅子を軽く叩きながら敵船の動きを注視する。

 シールド出力は低下し、エンジンも限界が近い。

 姫と従者たちの顔には再び絶望が走る。


 だが、数分もしないうちに、遠方から新たな信号が反応した。


「船長、応答があった! サラ・エクレール高官がこちらの状況を把握、直ちに救助隊を派遣するとのことです!」


 トビーの声には歓喜が滲んでいる。


 敵は射程を詰め、最後の追い込みをかけようとしたその瞬間、周囲の宙域に銀河連盟の警備艦がワープインした。

 矢継ぎ早に防御スクリーンを展開し、ニャーバスター号と姫たちを庇う。


 ニャーバスター号の周囲を囲んでいた敵船たちは、新たな戦力の出現に怯み、その一部が焦って退却を図る。

 だが、何隻かは警備艦のトラクタービームで逃げ場を失い、無様に降伏信号を点滅させる。


「トビー、お手柄だ! お前の機転でこの窮地を脱出できた」


 ミャクターは操縦席で尻尾をゆらし、相棒を称える。

 トビーはほっと息を吐きながら笑顔を浮かべ、


「いえ、船長こそ見事な操縦でした!」


 と応える。


 船内後方では、アリーシャ姫と従者たちが肩を寄せ合い、救援に駆け付けてくれた銀河連盟艦隊を見て安心した表情を浮かべている。

 姫は目にうっすらと涙を浮かべていた。


「ミャクター船長、トビーさん。あなた方がいなければ、ここまでたどり着くことはできなかったでしょう。ありがとうございます……本当にありがとうございます」


 こうして追手を退けたニャーバスター号は、連盟艦隊の誘導に従い、安全に銀河連盟本部へと入港する。

 巨大なドックに着艦すると、タラップを降りた先にはサラ・エクレール高官が出迎えてくれた。


「ミャクター、トビー、よく無事にここまでたどり着きましたね」


 サラ・エクレール高官は落ち着いた声で二人を称える。

 これまでの付き合いからか、彼女は二人に信頼を寄せている様子だ。


「お久しぶりです、サラ・エクレール高官。今回はちょっと厄介な相手に追われましてね」


 ミャクターは軽く尻尾で挨拶するような仕草をみせる。

 トビーは緊張しながらも微笑み、姫と従者たちを紹介する。


 アリーシャ姫は一歩前へ出て頭を下げる。


「はじめまして、私がアリーシャ姫です。王国を奪われ、亡命するためにここへ参りました。どうか、銀河連盟の皆様のお力をお貸しください」


 サラ・エクレール高官は表情を柔らかくし、


「姫様、ご安心ください。銀河連盟は正義と秩序を重んじます。あなたのお話を伺い、正当な保護と支援を行うことを約束いたします」


 と約束する。


 無事、アリーシャ姫と従者たちは銀河連盟の保護下に置かれ、国を取り戻すための準備を進めることとなった。

 ミャクターとトビーも、必要とあらば姫の“騎士”として再び戦列に加わるかもしれない。

 しかし、それはもう少し先の話だろう……。


 こうして、二人は再びニャーバスター号に乗り込み、次なる冒険を胸に広大な銀河へと飛び立っていく。


 星々が瞬く限り、ミャクターとトビーの冒険は終わらない。

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