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宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード0「運命の出会い」

 銀河暦二二八七年、宇宙ステーション『スターキャットポート』は、銀河中からさまざまな種族が集まる交易の中心地だ。ここはいつも賑やかで、雑多で、数多くの情報が表裏問わずに数多くやりとりされる。


 つまりは、銀河でも有数の情報交流ステーションである。

行きかう人々も数多くの星々から集まってくるため、実に様々だった。


 そこで日雇いの雑用係で働く青年トビーは、いつものように重い荷物を運んでいた。

故郷の地球は遥か彼方。宇宙を旅する夢を見て、家で同然で飛び出してきたが、夢の代償は大きかった。あっという間に資金が底を尽き、もう何カ月もこのステーションで足止めを食らっている。


 彼は本日、何往復目かになる運搬業務で、心も体もクタクタだ。

雑に運んだ荷物がぶつかり合い、ガチャガチャと高い金属音があたりに響く。


「はぁ、こんな生活いつまで続くんだろう……」


 汗を拭いながらトビーがため息をついていると、不意に小さな影が視界に入った。


「おい、そこの人間!荷物をガチャガチャ鳴らすのはやめてくれないか?」


 低く鋭い声に驚き、振り返ると、誰もいない。


「どこを見ている!ここだ!」


 目線を少し下げると、そこには一匹の猫が立っていた。

ただの猫ではない。三本の尻尾を持ち、青く輝く目が鋭くトビーを見据えていた。


「しゃ、喋った!?」

「当然だろう。オレはただの猫じゃない。銀河一の冒険家、ミャクター・キャッツバーグだ!」


 トビーは驚きのあまり荷物を手から落としてしまった。

それがミャクターの足元で音を立てた。


「あー!うるさい!ちょっと!オレの足元で荷物を落とすなんて失礼だな!」

「ごめん、だって猫が喋るなんて聞いてないし!」

「フン、人間のくせに無礼な奴だな」


 ミャクターは尻尾をピンと立て、ふてぶてしく言った。

そして、トビーの顔をよく見つめると、何かを思いついたように話しかけた。


「……だが、見込んでやろう。オレの新しい助手にならないか?」

「助手?いきなり何の話?」


 トビーは戸惑いながら尋ねた。


「オレの冒険は宇宙を救うものだ。だが、尻尾だけでは限界がある。人間の手を借りるのも悪くないと思ってな」


 トビーは呆然としながら、目の前の三本尻尾の猫がどこまで本気なのかを測りかねていた。


***


 その時、突然、ステーション内に警報が鳴り響いた。


《ステーションの皆さん!ご注意ください!宇宙海賊がステーションに侵入しました!これは演習ではありません!繰り返します――》


 周囲が慌ただしくなる中、ミャクターは素早く動き出した。


「チッ、こんな時に海賊とは!」

「ちょっと待って、どこ行くの?」

「決まってるだろう。オレの船を守るためだ」


 トビーはなぜかその猫を追いかけることにした。

気づけば、トビーはステーションの格納庫にある小さな宇宙船の前に立っていた。


「これがオレの船、『ニャーバスター号』だ」


 ミャクターは胸を張る。


「いや、猫が宇宙船を操縦するなんて信じられないんだけど!」

「信じるか信じないかは勝手だ。ただ、この船に乗らなければ海賊に捕まるぞ?」


 迷う間もなく、トビーはミャクターに押し込まれるようにして船に乗り込んだ。

そして、船が離陸すると同時に宇宙海賊の追撃が始まった。


「おい、人間!操縦席の隣に座れ!」

「僕の名前はトビーだ!ちゃんと名前で呼んでよ!」


 トビーは怒りながらも、言われるままに席に着き、ミャクターの指示で船のシステムを操作し始めた。宇宙船の中は驚くほどハイテクで、トビーは操作に四苦八苦していた。


「ちゃんとやれよ、助手!この船はオレの命なんだ!」

「助手っていつの間にか決まってるし!」


 追撃してくる海賊船をかわしながら、二人は息を合わせて反撃を開始した。

ミャクターの尻尾が次々とスイッチを押し、トビーは慣れないながらも船の迎撃システム操作した。


「よし、やったぞ!大したものだ!」


 二人の連携で数機の海賊船を航行不能させると分が悪いと見込んだのか、蜘蛛の子を散らす様に周りの海賊船は退散していった。ミャクターは満足げに言った。


「うむ。トビー、オレは気に入ったぞ。オマエを正式に助手にしてやる」

「えっ、僕の意思は関係ないの?」

「人間はいつもゴチャゴチャ言うんだな。オレの直感だが、オマエには少しだけ可能性を感じる。だからオレと来い。銀河を冒険して、その目で世界の広さを知るんだ」

「えぇ?ほんとに僕が行くの?まぁ、特に行く当てもないから構わないといえば構わないんだけど。それに、冒険って聞くとワクワクするかも!?」


 トビーは半ば強引に連れて行かれる形になったが、不思議と心が少し躍っていた。


 こうして、ミャクターとトビーの奇妙な冒険が始まったのだった――。

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