宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード28「ミャクターとわがままな王子④」
「『世界一おいしいお菓子を作れ!』だって……」
ミャクターは、王子が出した新たな無理難題に不満を感じていた。お菓子作りは得意だが、王子の指定する条件はどれもこれも突飛で難しい。
「金色の砂糖で、豪華に飾り立てろだと???」
ミャクターは眉をひそめる。
「でも、できるだけのことはやらないと、王子様に捕まってしまう」
トビーは前向きに答えたが、その目には少しの不安も浮かんでいた。二人は城の厨房に向かい、まずは材料をそろえることから始めた。しかし、王子が注文した材料は、普通のケーキでは使わないような高価なものばかり。
「これが金色の砂糖……うーん、確かに豪華だけど、使い方次第ではただの派手なだけになっちゃいそうだな」
ミャクターは頭を抱えながら言った。
トビーは考え込んでいたが、ふと顔を上げて言った。
「船長、ちょっと待って。王子が求めているのは、豪華な見た目のものではなくて、心からの温かさじゃないかと思うんだ」
「心の温かさ?」
ミャクターはトビーの言葉に少し驚いた。
「だって、王子がこれまでしてきたことって、ただ『完璧さ』を求めていたように感じる。もしかしたら、本当に求めているのは、もっと素朴で、あたたかいものなんじゃないか?」
ミャクターはしばらく考えた後、目を細めて言った。
「そうかもしれないな。豪華さよりも、手作りの温もりってことか」
二人はさっそく、シンプルな材料で、お菓子作りに取り掛かった。
「これで、王子が喜んでくれるといいけど……」
トビーは少し不安そうに言った。
ミャクターは微笑んだ。
「うん、心を込めて作れば、きっと伝わるはずさ」
二人は時間をかけて、王子の指定した通りに派手さはないが、手間暇かけて心を込めたお菓子を作り上げた。完成したのは、シンプルで温かみのあるクッキーと、香り豊かなフルーツケーキ。見た目こそ豪華ではないが、どこか優しさを感じるお菓子だった。
王子の前に、お菓子を置くと、王子はじっとそれを見つめていた。
「こんな……」
王子は少し驚いた表情を浮かべた。
「王子様が好きな味に仕上げました。心を込めて作りましたので、ぜひお召し上がりください」
トビーが少し緊張しながらも言った。
王子は無言で手に取り、口に運んだ。
その瞬間、王子の顔に変化が表れた。
「……」
最初は無表情だったが、しばらくしてその表情がほんの少し緩み、目を閉じて静かに味わいながら言った。
「……不思議だ。こんなに素朴でシンプルなのに、どこか温かくて……心が落ち着く」
ミャクターとトビーはその言葉を聞いて、ほっと息をついた。
王子は再び口を開いた。
「……こんなお菓子、初めてだ。これが本当に、おいしいんだな」
少しの間、王子は黙ってクッキーを食べながら、何かを考えているようだった。やがて、王子が静かに口を開いた。
「ありがとう……お前たちが作ったお菓子は、思った以上に心地よかった」
その言葉を聞いて、ミャクターとトビーは互いに微笑みを交わした。しかし、王子は急に態度を変えて言った。
「でも、まだ満足できない!次は、星空を見せてくれ!私が望む星空を!宇宙で一番美しいものを見せるんだ!」
「また無理難題か……」
ミャクターは少しげんなりした様子で言ったが、トビーは静かに答えた。
「王子様が本当に求めているのは、ただの星空ではないと思う。もっと深い意味があるんじゃないかな」
二人は再び、王子の心の奥底にあるものを理解しようと考え、次の課題に挑む決意を新たにした。
わがままな王子の無理難題はまだ続くのか……?




