宇宙ネコ ミャクター船長の大冒険:エピソード1 「宇宙ネコ ミャクター船長 登場! トビーもいるよ!」
「ミャアオーン!おい、宇宙船のエアロックがまた壊れてるぞ!」
船内に響き渡る声は、猫らしからぬものであった。
船長である猫――名をミャクター・キャッツバーグといい、銀河でも指折りの冒険家である。その毛並みは美しい茶白のバイカラーで整えられ、神秘的な青い瞳を持ち、鋭い洞察力を感じさせる。さらに特徴的なのは、彼の尻尾は三本あるということだ。
彼の船『ニャーバスター号』は銀河系を駆け巡り、数々の惑星を踏破してきた。その船は、銀白色で黒曜石のような光沢を持ち、外観は滑らかな曲線が多用され、まるでネコのような柔軟性を連想させるデザインをしている。
助手のトビーは、ミャクターの相棒である。短めの茶色い髪に、快活な瞳を持つ青年で、やや華奢な体格に見えるが、適度に鍛えられており、船内を所狭しと動き回っている。彼は人間だが、猫の船長に仕えるために一生懸命働いているのだ。宇宙で猫が船長を務めるのは珍しいことではない。
なぜなら、猫は宇宙航行において非常に重要なスキルを持つからだ。具体的には、重力のない環境での柔軟な動きや、危険を察知する直感、そして人間をうまく使う才能だ。――理由はわからないが、猫族は人間族に好かれる傾向が強いのである。
その日、ミャクターたちは新たなミッションを遂行中だった。目的地は未開の惑星『ニャラダン』銀河の辺境にあり、そこには伝説の『ネコノミコン』と呼ばれる古代アーティファクトが隠されているという。
「トビー、エアロックを急ぎで直せ!ニャラダンに降下するぞ!」
「了解! でも船長、一休みしてからでもいいんじゃない?」
「休憩はニャラダンを踏破してからだ。さぁ!行くぞトビー!」
ミャクターは、自慢の三本尻尾をふわりと揺らして笑った。彼の三本尻尾はただの飾りではない。それぞれの先端が高度なセンサーとなっており、危険や宝物を感知する能力がある。猫型エイリアンでも他に類を見ない。まさに唯一無二の存在だ。
***
船が大気圏を突破すると、目の前に広がるのは青と紫のもやが漂う幻想的な風景だった。
ニャラダンは謎に包まれた惑星であり、誰もその全貌を明らかにしたことがない。
「船長、あの山の上に何か光っています!」
「うむ、きっとあそこにネコノミコンがあるに違いない。オレの直感がそう感じている。行くぞ!」
着陸してすぐ、彼らは異様な光景に遭遇する。草原には巨大な猫じゃらしのような植物が生い茂り、その中に無数の猫型ロボットが動いていた。
「ニャロボットか……古代猫文明が作った遺物だな。こいつは厄介だ」
「動いてますけど、船長!襲ってきそうですよ!」
案の定、ニャロボットたちは彼らに襲い掛かってきた。ミャクターはその驚異的な身体能力をフルに活かし、鋭い爪で一体ずつニャロボットを撃破していく。トビーもブラスターガンを手に取り応戦した。
「トビー、スキを見せるな!おい、後ろだ!気を付けろ!」
トビーの背後から一体のニャロボットが忍び寄り襲い掛かる!
「わわっ!船長!助けて――!」
その瞬間、ミャクターの三本尻尾が一斉に光り出した。そして、尻尾の先から強烈なエネルギービームが放たれ、トビーに襲い掛かったニャロボットを機能停止させる。なぎ払う様に放たれたビームは、ニャロボットたちを次々と誘爆させた。
「ありがとうございます。さすが船長…すごい威力だ……」
「奥の手ってやつだ。ま、オレにかかればこんなもんさ」
少し得意げなミャクターは、トビーの感謝に胸を張って応えた。
山頂にたどり着いた二人の前には、黒く輝く大きな本が鎮座していた。これこそが『ネコノミコン』だった。しかし、近づこうとした瞬間、本が自ら開き、猫耳のような形をした光が飛び出してきた。
『よくぞここまで来た。選ばれし者よ』
「お前は何者だ?」
ミャクターが光る猫耳に尋ねる。
『我はネコノミコンの守護者。この本を手にする者は、銀河のすべての猫の運命を背負う覚悟が必要だ。お前にその覚悟はあるか?』
トビーが驚きの声を上げる。
「すべての猫の運命って…そんな責任を船長に押し付けるんですか?」
「黙れトビー、これは、おそらく猫族の試練だ!」
ミャクターは堂々とネコノミコンの前に立つと、胸を張った。
「我こそが銀河一の冒険家、ミャクター・キャッツバーグだ。この本を受け取り、猫の未来を切り開く覚悟がある!」
するとネコノミコンは光を放ち始め、船長の三本尻尾にさらなる力を与えた。それは、未来を見通す力だった……
『この力をもって、正しき未来を切り開くのだ。猫族に幸あらんことを……』
ミャクターへ力を授けた後、『ネコノミコン』は空間に溶けるようにその姿を消していった。
***
「よし!トビー、撤収するぞ」
不思議な現象を体験した二人は満足気であった。――無事、ニャラダンから脱出したミャクターとトビーは、船内で新たな冒険について話し合っていた。
「『ネコノミコン』実に興味深いアーティファクトだったな」
「でも船長、銀河の猫たちの運命を背負うって、具体的にどうするんです?」
「ん?簡単だ。猫が暮らしやすい未来を目指して今まで通り、気ままな冒険を続けるさ!」
「……それって、今と何も変わらないじゃないですか!?」
トビーはそう言いつつも、彼の自信に満ちた頼もしい態度に安心感を覚えた。ミャクターは笑って尻尾をふわりと振りながら言った。
「さぁ!次のアーティファクトを求めて冒険だ!ニャーバスター号は止まらない。それがオレの生き様だ!」
こうして彼らは新たな旅路へと出発した。銀河は広く、様々な未知の可能性に満ちている。そして、ミャクター船長の冒険はこれからも続くのだった。