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キミじゃないと言われても  作者: 明瀬 うらび
9/13

7、理由は(諏訪野視点)

日曜日。

俺は待ち合わせ場所に1時間前から来ていた。


もちろん森尾さんと出かけるため。

今日は、映画に行く予定だ。


前から気になっていたんだけど、映画とかどうかな?と森尾さんから提案されたときは、本当に嬉しかった。

今まではどこか行きたいところあると聞いても、どこでもいいよとかだったのに。


俺と森尾さんの仲良しレベルが上がったようで、本当に嬉しかった。


懐かなかった猫が懐いてくれた様な嬉しさ?みたいな?

森尾さんが猫でないのはわかっているけど。


もっともっと仲良くなりたい。

笑ってくれると俺も嬉しくなって。


一緒に居ると楽しくて、幸せだなって思って。


細貝に長期戦覚悟しろよと言われていたから、長い目で考えなきゃと思っていたけど、自分が思っているより早く仲良くなれている気がする。


俺がただ強引なだけかもしれないけど。


最初に出かけた次の日に、細貝にデートだと思ってアドバイスしたけど、ただの友達同士のお出かけならそこまでしなくてもいいと言われたけど、変わらず俺は待ち合わせに早めに来て、手を繋いで歩いている。


森尾さんの手は思っているより小さくて、何回手を繋いでも顔が赤くなる。

その顔が可愛くて、手を繋ぎたくなるのだ。


好きな子をいじめるってこんな感じなんだろうか?

俺は過去にそんなことしたことないけど、その気持ちがこの年になって初めてわかった。


そして普段クールな森尾さんをこんな顔をさせているのは俺なんだっていう優越感みたいなものを感じてしまう。


女の子の友達って、最高だなんて思っているけど、他に作ろうとは思わない。

だって、他の女子は緊張して一緒に出かけてもきっと楽しくない。


緊張しないで一緒に居れる唯一の女子。

もう俺のメンタルが弱いことを知られているし、かっこつける必要もない。


そして俺のことを何をしても嫌わないと言ってくれた森尾さんの言葉を信じているから、俺にしては大胆な行動がとれる。


人の顔色を常に気にしていたのに、森尾さんにだけは素でいられる。

そして、森尾さんもたまに仕方ないなという顔をしているけど、どんな俺でも受け入れて笑顔でいてくれる。


だから一緒にいると楽しくて、2週間に1回じゃ足りなくて、本当はもっと一緒にいたいと思って、俺は毎週日曜日森尾さんをお出かけだといって誘った。


前は2回に1回は断られていたのに、最近は毎週一緒に出かけられることが嬉しい。


「お待たせ。ごめんね。今日も早いね」

今日の服装はオレンジに黒のチェックの服装で。

髪型はお団子だ。


今日も森尾さんは可愛くて、


「いつもかわいいけど、今日の森尾さんも可愛いね」

と言う。


細貝には最初のアドバイスで服装褒めろって言われたけど、今は細貝に言われたからじゃなくて、俺が素直にかわいいって思っているからだ。


「・・・ありがとう」

照れくさそうに返事をする森尾さんはやっぱりかわいい。


前は無言になったり、お世辞言わなくていいよなんて言っていたけど、俺が何回も言うから諦めたのか最近は素直にお礼を言ってくれるようになった。


じゃあ、行こうかと手を差し伸べると、俺の手の上に森尾さんが手をそっと差し出した。

なんかいいな。こういうの。


ふと思った。幸せだなと。


*********


恋愛をすると、頭がお花畑になるっていうけど、俺の頭がそんな感じだったのかもしれない。


恋愛はしていないけど、森尾さんのことをついつい考えて、頭の中は森尾さんでいっぱいで。


浮かれていて模試の順位を落としてしまった。


自分でもバカな理由だなと思う。

親や担任や周りには何かあったのか?と心配されたけど、誰にも本当のことは言えなかった。


この時期の順位が落ちるのは良くないけど、次で挽回すればいいと特に気にしていなかった。


いつものように森尾さんを誘ったけど、


「もうしばらく出かけるのはやめよう。この前の模試の成績落ちたの私のせいだよね?ごめんね」

と森尾さんに言われたときには、頭がまっ白になった。


確かに今の時期勉強は大切だ。

言われていることも正論なのはわかっている。


せっかく仲良くなれたと思ったのに、そう思っていたのは俺だけだったんだろうか?

毎週楽しみにしていたのは俺だけ?


何か言えばいいのに、言葉が出なかった。


昼休み終わりのチャイムが鳴った。

俺は結局何も言えないまま、自分のクラスに帰ったのだった。













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