4、ドキドキしているのは
遊園地に出掛けた次の日のお昼休み。
私達は4人でお弁当を食べながら、
「昨日の乗り物どれが一番だった?とか遊園地限定のお菓子買い損ねたとかまた行きたいねなんて、話は主に昨日の遊園地の話で盛り上がっていた。
周りの視線がとにかく凄い。
私以外みんな人気者だしな。
ふと諏訪野くんが
「俺、ちょっと喉渇いたからちょっといってくる」
と席を立ち、教室を出た。
「いってらっしゃい」
と3人で見送ったけど、ふと嫌な予感がした。
「私も喉渇いちゃった」
と席を立ち、諏訪野くんを追いかけた。
急いで自動販売機の前に行ったけど、諏訪野くんは居なかった。
ふと自動販売機の近くの玄関先を見ると、女子の集団の中心に頭が一つ分大きい諏訪野くんが見えた。
「ねえねえ、昨日森尾さん達と一緒に遊園地行ったって本当?私も一緒に行きたかった~」
「私も私も。今度行くときは私も誘って欲しいな」
「ずる~い。私も行きたい」
・・・どこから聞いたって言いたかったけど、隠すつもりもなかったから教室で普通に話していたっけ。
人気者は大変だなと見ていたけど、諏訪野くんのなんだか顔色が悪い気がする。
そう思ったら、私は無理矢理女子の集団に入り、
「あの、話し中のところごめんね。諏訪野くん、細貝くんが呼んでいるからちょっと来て」
と諏訪野くんの手を引っ張った。
諏訪野くんはとにかく目立つ。
何もしなくても目立つ。
だから、人気のない職員用玄関の階段下に連れてきた。
「森尾さん。・・・なんでここに???」
確かに、無理矢理こんな所につれてきたのだ。
警戒されても仕方ない。
「ごめん。ちょっと心配になっちゃって。そして具合悪そうに見えるけど大丈夫?」
「うん。大丈夫じゃないかも。でもさっきは助かったよ。ありがとう。俺、林川さんと一緒にお昼ご飯食べれて嬉しかったのに、また緊張しちゃって。大口開けて食べれないなとか、箸の持ち方とか今まで気にした事ないのに急に気になったら、胃が痛くなってきて。どこかで落ち着こうと思ったら、女子に掴まって。ごめん。ちょっと横になりたい」
「じゃあ、保健室行く?」
「・・・保健室は行きたくない。・・・保健室で寝ていたときに襲われそうになったことあるんだ。具合悪くて寝ていたから、驚いて声も出なかったし、抵抗も出来なくて、先生に助けられたけど、それ以来保健室は絶対行きたくなくて」
・・・襲われるって。
確かに具合悪くて保健室にいるのに、安心して寝られない保健室ってトラウマになるのもわかる。
しかも寝ぼけて頭が回らなければ、ちょっとしたパニックになるだろう。
「へえ~。・・・もてる男って大変なんだね」
これ以上なんて言っていいかもわからず、乾いた笑いしか出なかった。
行きたくない理由はわかったけど、横になるにしても床だし・・・固いよね。
それだと良くならないんじゃと思って、私は座って膝を叩いた。
「じゃあ、膝枕してあげる。どうぞ」
「・・・へっ?!」
途端に顔が赤くなる諏訪野くん。
「そんなに顔赤くすることだった???」
たかだか膝枕で?
沢山恋愛経験ありますみたいな顔しているのに???
でも、過去にいたとしてもこのメンタルじゃあ長く持たないかも。
「だって、膝枕だよ?!そんなのしてもらった事ないし、俺の緊張がまたひどくなるよ」
「ぐだぐだ言わないで横になる。目をつぶれば何も気にならないから。保健室に行きたくないんでしょう?」
私は諏訪野くんの腕を掴んで引っ張って、体制を崩した。
諏訪野くんは観念したのか、おそるおそる私の膝に頭をのせた。
「あの・・・目をつぶっても、やっぱり緊張するしさっきからドキドキが止まらなくて落ち着かないんだけど」
諏訪野くんは令華が好きなはずなのに、ドキドキしてくれるんだ私に。
恋愛と無縁だった女子と意識されていない私に?
「今はとにかく休むこと考えなよ。後で起こすから」
意識してませんと冷静なフリをするけど、私の心臓もさっきからドキドキしていたのだった。
私の顔はあきらかに熱をもっている。
絶対真っ赤だ。
諏訪野くんが目をおとなしく閉じてくれてよかった。
こんな顔見られたくない。
こんな顔していたら、諏訪野君を困らせてしまう。
こんなの私のキャラじゃない
それに諏訪野くんが好きなのは令華だし。
私の事はなんとも思っていないだろう。
自分でもわかっているんだ。
私は令華みたいに全然かわいくないし、可愛くできない。