表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミじゃないと言われても  作者: 明瀬 うらび
4/13

3・5、イメージなんて、あてにならない(諏訪野視点)

初めて森尾さんを認識したのは、1年の時だった。


細貝のクラスに教科書を借りに行って、隣の席に座っている森尾さんと話しているのを見た時だった。


綺麗な人で、笑顔が素敵だなと思ったけど、どうやらその笑顔は女友達と細貝限定と気がついた。

そして森尾さんは細貝が好きなんだろうなと全然関係ない俺でもわかった。


そのうちこの2人はくっつくんだろうなと思っていたのに、ある日細貝から彼女が出来たと言われ紹介されたのは、林川さんだった。


森尾さんじゃなかったことに意外だなと思ったけど、口には出さなかった。

言ったところで、何も変わらないのはわかっていたから。


そして、細貝を通じて林川さんを知るうちに、俺は彼女に惹かれた。


林川さんは外見もかわいいけど、俺が気になったのは彼女の自然体なところ。

林川さんも外見で姫みたいなイメージを持たれて大変だろうなと思うけど、俺と違ってキャラを作っていない。


林川さんはいつも自然体で、作っていない天然だった。

キャラを作っている俺は林川さんに一生適わないと思った。


いつも一緒にいて癒される。


こんな彼女がいたらなと思って林川さんを好きだった。

でも、細貝から盗ろうとは思わなかった。


昔つき合ったことがあるけど、初めての恋愛は1週間であっけなく終わった。

その後も何人かと付き合ったけど、やっぱり長くても3ヶ月しかもたなかった。

結局、俺には恋愛は向いていないのがわかった。


わかってからは、それ以降は誰ともつきあっていない。


片思いの方が傷つかなくていいんじゃないかと思っていたけど、ふと林川さんとの思い出が欲しいなんて思ってしまったのだ。


高校生活の約2年林川さんが好きで、卒業したらきっとそれっきり。

細貝が遊園地好きなのは知っていたし、Wデートって言えば一緒に行けると思った。



問題は俺の相手だけど、森尾さんがふと浮かんだ。

細貝のことが好きだった森尾さんなら、きっと断らないだろうと。


俺の計画は完璧だったはずなのに、森尾さんが断って、更に森尾さんが一緒じゃないと私も行かないと林川さんも言っていると聞いて、驚いたのと焦ったのであわてて森尾さんのクラスに行った。


初めて話した森尾さんは全然イメージと違った。


細貝が森尾はいいやつってずっと言っていたから、いい人だと思っていたし、昔の笑顔だった森尾さんのイメージが強かったせいもあるだろう。


笑顔は少なくても、俺が自ら頼めば絶対大丈夫だと思っていたのに、やっぱり断られた。

しかも、凄い冷たい目で俺を見た。


こんな露骨な態度を取られたことない俺は、一瞬震えてしまったけど、でも他の女子と違って、媚びを売らないから、話やすかった。


森尾さんが「うん?」と疑問系で言ったのは気がついたけど、気がつかない振りをして無理矢理ありがとうと強引に話を進めたけど、何も言われなかった。


これで念願の林川さんとの思い出が出来るとウキウキしていた。


このまま上手くやれると思っていたのに、森尾さんが一つ目の乗り物でダウンした。

俺は乗り物に強かったから、みんなもそうだと思って甘く見ていたのかもしれない。


森尾さんの顔色は青く、今にも吐きそうって顔をしていた。


強引に誘ったのは俺だし、申し訳なくて一緒にいることにした。


なんか、森尾さんのイメージが変わったな。


森尾さんに綺麗系って言ったのに、全然信じていなかったけど、近くで見ると具合悪くて顔色悪そうだけど、それでも綺麗だなって思う。


綺麗なのに森尾さんがモテないのは、雰囲気によるものだろう。


隙がないし、愛想がない。


勿体ないと思う。


密かに森尾さんのこといいって言っている奴がいるのも知っているけど、話しかける隙がないから諦めちゃうんだよな。


そして、勇気を話しかけても素っ気ない返事が返ってくる。

それで心折れるんじゃないかと俺は思う。


目力もあると思う。

冷たい目で見られて、震えたのは俺だけじゃないはず。


でも細貝や林川さんに向ける笑顔は俺も見惚れるほど柔らかくて綺麗で。


やっぱり勿体ないなと思うのだった。


森尾さんの具合が回復して4人でまわって、暫くして自分の異変に気づいた。

胃がキリキリと痛む。


おかしい。

さっきから、変な汗がでている。


念願の林川さんとのお出かけなのに。


確かに林川さんに見られると緊張する。

上手く笑えているのか自信はない。


顔の筋肉が常に笑顔でいるせいか、なんかピクピク痙攣しているような気がする。

変なこと言って嫌われないか気になって、何を言うのも頭のなかで必死に考えすぎて頭も痛い。


なんとかやり過ごしていたのに、最後にみんなで観覧者乗ろうよとみんなで話しているけど、あんな狭い空間の中に林川さんといたら、絶対吐く。


無理だ。これ以上は持たない。自分のことだからよくわかる。


俺はとっさに「うーん、こういうのはカップルで乗った方がいいんじゃない?細貝と林川さんで乗りなよ。俺は森尾さんと乗るから」と言った。


森尾さんの具合の悪いさっき見たし、もし俺の具合が悪くなってもお互い様だと思った。

林川さんには絶対見られたくなかったし、なんとか別々に観覧車に乗れて俺は安心した。


観覧車に乗った途端、森尾さんに理由を聞かれた。

それはそうだろう。

森尾さんには今日来た理由は林川さんとの思い出作りにと話していたから疑問に思うのも無理はない。


理由を話した後


「___で、私は平気なの?まあ、吐いてもエコバッグあるから、言ってくれればあげるよ」


と言う台詞に森尾さんって凄いなって思った。


汚いとか、止めてではないんだ。


心臓がぎゅんっと鳴った。

なんだろうこれ。こんなの初めてだ。


「ある程度割り切ったほうが、うまくやっていけないような気がするよ。100人に好かれなくてもいいじゃん」


なんて台詞に心がざわつく。

みんなに好かれたい。嫌われたくない。

そればかり思って行動してきたから。


そして更に不安だというと、


「何があっても嫌わないし、いつも諏訪野くんの味方でいてあげる。私は保険でいいよ」


予想を超える台詞が返ってくる。


おかしいな。

俺が好きなのは林川さんのはずなのに、さっきからドキドキが止まらない。


でも気持ち悪くもならなければ、具合も悪くならない。

今日だけの関係のはずなのに、もっと森尾さんと仲良くなりたい。


こんなことを女子で思ったのは森尾さんが初めてだった。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ